ガレージキット、特にキャストキット(レジンキットともいう)の表面についた離型剤落としについてだ。
キャストキットはシリコンゴムで作った型にポリウレタン樹脂を流し込んで製造されるキットだ。ポリウレタンが硬化して型から外す際に、ウレタンとシリコンの癒着を防ぎ、外しやすくる目的と耐久性が低いゴム型の保護のために、バリアコートなどと呼ばれる油が塗られている。
そのため買ってきたキットを触るとヌルッとした指先が滑る感触がある。そのままでは塗料や接着剤が弾かれてしまい製作ができないため、この離型剤を落とす作業がキャストキットの最初の必須作業である。
ちなみにボークスのキットだけは離型剤は使われていない。しかし、ポリウレタンに含まれるキシレンが硬化後表面に浮き出るため、何らかの洗浄は必要だ。(最近はノンキシレンのウレタン樹脂が主流らしい)
しかしである、これが結構難儀している。
特に古いキットは強烈だ。今ほど技術的に良くなかったせいもあるし、メーカーに話を聞いたところ、離型剤の油が時間とともにパーツに染み込むために落ちにくくなるそうで、本来はすぐに落とすのが一番ベストだそうだ。
正直、そんなことを言うのなら「メーカーが離型剤落とした状態で販売しろ」と言いたいが、値段に跳ね返ってくるので我慢である。
ガレージキットの価格の大部分は手作業が主流のための手間賃(人件費)だ。今回洗ったムサシヤの1/5「ホシノ・ルリ艦長服」も定価で税抜き14800円だ。これ以上高くされるのはゴメンである。諦めて自分で洗うことにしよう。
昔ながらの方としてクレンザーと中性洗剤を混ぜたもので洗ったのだが、結果はイマイチ。私はセロテープをパーツに貼って、その付き方で判断してるのだが、すぐに弾かれてしまう。
メーカーが発売している、写真のようなスプレー式の離型剤落としや、ガイアノーツの「レジンウォッシュ」のような漬け置きタイプや、機械油を落とすための洗剤などを使ったが、どれも今一つだった。
それで色々と調べた結果、煮沸するのが良さそうなので、それを試すことにした。
煮沸することで、パーツに染み込んだ油が表面に浮くために落としやすくなるそうだ。また、パーツ内にガスが溜まっていることがあるので、ガス抜きのためにも煮沸するのは良いようだ。
実際に鍋で煮沸している状態だ。
水の表面に浮いているのは灰汁のようなものは、洗剤だ。
煮沸が終わったら、洗浄だ。写真はクリームタイプのクレンザーに食器洗い用の中性洗剤を混ぜたものだ。
それを歯ブラシにつけてパーツを擦ってやる。特にモールドや際の部分を念入りに洗ってやる。
擦った洗剤を水洗いで流したら、最後の仕上げは超音波洗浄器だ。
過去のテストの結果で超音波洗浄器は僅かではあるが、離型剤落としの効果があるのだが、今回の使用目的は落とし残した洗剤の除去だ。離型剤を落としても、洗剤を落とし残して塗膜が剥がれたら本末転倒だからだ。
ガレージキットの場合、プラモと違って個々のパーツがでかいので、このように洗浄槽に入りきらないパーツもある。こういう場合はこの状態で1回目の洗浄を行い、2回目はパーツを逆さにして洗えなかった部分を洗ってやればいい。
では結果だが、方法としては成功のようだ。
今までは弾かれていたセロテープがしっかりと着いて、剥がす際に密着した糊の抵抗を感じたくらいだ。
この方法で洗浄を行えばいいようだ。
セロテープの食いつきが良くなったので、かなり強引だがセロテープだけで仮組をした状態だ。
1/5ともなるとパーツが大きく重いので、セロテープだけで支えるのは無理があるので、今にもバラバラになりそうだが、何とか持ってくれている。完全ではないが、このくらいテープの着きが良くなったということだ。