階段の蛍光灯が切れかけてチカチカしているビルから出てきたマルシチは、路地のビルの隙間から見え始めた月を見上げて 深くため息を付いた。 松木が永久モーターの開発に取り組んで数年。今夜最終実験の予定だ。
マルシチが工場に戻ると、籾山も来ていた。
『おばちゃんとこ換気扇修理終わりました。イス壊しちゃっから直しといて下さい。』
おいおい〜 まあいいや、始めるぞ!!
薄暗い工場の中にスポットで浮かび上がったテーブルの上にそれは置いてあった。手のひらサイズで一見何処にでもあるモーターの様だが、メタリックの駆体と飛び出たシャフト以外は配線も何も出ていない。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240229/02/mddmot/e9/db/p/o1045087615407232250.png?caw=800)
「ほーっ」強いスポットにおでこをテラテラさせながら籾山がうなる。「始動は?」
指でひねるだけさ、他には何もいらねえ。いくぞ!
松木はモーターのシャフトをクルッとひねった。
・・・・・・・・・
「ん?、、、動いてるのか??」
シャフト触ってみろ。
籾山は言われるままにシャフトをつまむ。
シューン 籾山の指とシャフトの擦れる音が微かに、
シューウウウううう!!「あちっ!!!、、、回転がどんどん上がっとる!!」
あああぁ!回転計つけときゃよかった!!
「ほぇ~ しかしこんなに高回転しとるのに駆体が熱くならんねぇ」このくらいじゃな、タービンは完全に浮いてるからなあ。松木はドヤ顔だ。「これ、、電力取るの動力取るの?」 どっちもだ。松木はふんぞり返った。
「こりゃあ大変なもの創ったなあ」
スポットの中にモーターを前に目をキラキラさせたおっさん3人の顔が浮かび上がった。
「特許は」
いくつか出す。ただ磁石はうちしか造れねぇ
材料的なノウハウの問題だ。
「販路は?」
まあ伍丼だろうなぁ
伍丼…GORDON 国内有数の財閥でかつて松木が在籍していたゼネコンも伍丼の傘下であった。