猫のおしりを見るのが好きだ。
といっても、よそのうちの猫ちゃんや外の野良ちゃんのおしりはそうまじまじとは見られないので、もっぱら愛猫のおしりと向き合う。
そして、おしりの匂いを嗅ぐのも好きだ。
まず少し尻尾を持ち上げて、おしりが汚れていないかを確認する。愛猫の機嫌が悪ければ、この時点で猫パンチをくらうこともあるけれど、そのときはおとなしく引き下がる。
歳を取るとあまり毛繕いをしないので、少しばかり汚れが付いていたりする。そういうときはウエットティッシュで拭いてやる。汚れていなければ、そのまま鼻を近づけて匂いを嗅ぐ。
わたしは挨拶がわりと、体調の変化を知るためにやっている。
もちろんいい匂いとはいえないけれど、鼻をつまむほど嫌な匂いではない。
わたしにとっては気持ちの落ち着く匂い。
ちなみに、肉球は子どもの頃一緒に住んでいたひいおじいちゃんの匂い。

愛猫は今、一日のほとんどを寝て過ごす。だから彼女のおしりの匂いを嗅げることが以前より少なくなった。
どうしようもなく疲れたり、どうしようもなく泣きたくなったり、どうしようもなく悔しかったり、そんなときはよく彼女のお腹に顔をくっつけたものだ。
お腹は干したての布団のような匂い。

すっかり年老いた愛猫だけれど、彼女の匂いはずっと変わらない。