
『泣き』を求めて映画は見ないのだが…
健さんの『幸福の黄色いハンカチ』はどうしても泣いちゃうね!
まあ、時代もあるから今の「正しい男女平等」で「犯罪は全て悪行」な
清廉潔白人生志向の方々は、所々で「何なの?」な感覚に陥るらしい。
この映画の中の数日間の青春のような日々は『何もないから何かしたい』という
学生よりは少しだけ世の中を知った、まだ若い人達の物語なのだ。
はためく黄色いハンカチが現れた瞬間に流れるパーンパカパカパパパパパー!という晴れやかな
音楽と、健さん倍賞さんの再会を見届け、盛り上がった武田鉄矢&桃井かおりの
「あ、真昼間の農道でこの直後に絶対カ〇セックスだな」のシーンが清々しい。
(それにしても武田鉄矢って人は何十年経っても体系が同じだ。プロだなプロ!)
この後のそれぞれの人生を想うと、それはやはり『普通の生活』を送る事になるワケで
倍賞さん演ずる妻がどんなに健さんを待っていたと健さん自身もわかっているにしても、
健さんはたまに「何かまた隠してるんじゃねえのか?」と疑心暗鬼で、妻に感じ悪くしたり
妻も「あ~マジで洗濯機欲しいわ。酒ばっか買いやがってバカ」などと
健さんを恨めしく眺める日もあるだろうけれど。
武田鉄矢&桃井かおりのその後はどうなったのだろう。
まだまだ勢いだけで物事が乗り切れる時に知り合った2人だから
北海道から帰って、アパートでも借り、共稼ぎしながら
賑やかに『普通の生活』をしているのではないか。
そんな普通の『嫌だったり呑気だったり』な日々が
やっぱり愛おしいと思えるくらいに時間を重ね
ふいに黄色いハンカチがはためくシーンを思い出し、
互いを見て安堵と軽い諦めを感じつつ…
みたいな両夫婦にどこかの世界でなっていて欲しい、と私の中で
勝手に続編を作っている。
子供の頃や若い頃に好きだった映画を見返すと、当時は全く見ていなかったモノを(物質的にも)
再発見できて非常に面白い。
20代の頃、ブラックカルチャーにどっぷりだった私は映画といえば
米軍基地の知り合いが貸してくれるHIPHOP物やスパイク・リーだった。
歯切れの良いエボニックスと、粋なファッションによじれるように恋愛する登場人物が
目新しくて、時間を作っては夢中で見ていた。
今となっては、恐ろしく恥ずかしい黒歴史な自分だが当時は
生意気な黒人少女の表情を真似て、
唇 を 異 常 に と ん が ら し て
眉 を 互 い 違 い に し
半 分 目 を 瞑 っ て 、 流 し 目 気 味 に 相 手 を 見 る
などという意地悪オランウータンが老眼でイチャモンつけているような顔を
しょっちゅうしていた。
当時の写真に、苦行のようにデカくて重いピアスを耳から垂らし
テカテカした黒いスポーツブラ(フワちゃん…)に、アフリカン・マタギのようなヒョウ柄の
毛 足 の 長 い ロングコートに得意気に埋まりつつ、唇を突き出し(味噌汁味見風)
す ね た 麗 子 像 みたいな顔で、ピースをしている魔界のバカみたいな私がいるのだが
処分しようにも、一緒に写っているのが当時の彼氏で(19歳・米兵・ミシガンの実家に兄が6人)
これまたコイツが「オレはウェズリー・スナイプス!クールだべよ!」とばかりに気取って
唇をとがらせ、胃腸と頭の弱いカラス天狗みたいな顔をしているのが気の毒な
一枚があるのだが、何故かどーしても捨てられない。(他のは捨てたのに)
誰にも見せてはいない。極秘だ、極秘。
結婚後は、オットの身内やら自然と知り合った人々のおかげで
当時は画面を通して憧れていたブラックカルチャー映画も、ほとんどが絵空事とわかり
今は「どーしよーもない事ばっかで巻き込まれたくねーんだよ!バカ!」と
生意気な黒人少女(姪っ子とその友達)にはセクハラ発言をし、絶倫な黒人少年には
「ベイビーママだらけになってお尋ね者みたいに州から州に逃げる人生になるぞ!」と
苦言を呈すクソばばあ(こんぬつは!日本から来ました!)となった。
人種キャベツ!?差別!?え、レイシスト!?
何それ!?霊媒師!?っつーかブレイズ高かったから2か月洗ってないし!痒いし!
アメリカで、そんな人達を身近で見ていると
「とにかく日々の生活っすよね、ハイ!川の流れのようにっスよね!人生って不思議なもんデスネ!」
と地に足がめり込む勢いである。
そういえば、『幸福の黄色いハンカチ』の山田洋二作品で他にも大好きな映画がある。
渥美清さんの『男はつらいよ』は子供の頃から「面白いオッサンと人情話し」で大好きだった。
今も時々見ては、寅さんのおじちゃん・おばちゃん家のシーンで
自分の子供時代、親戚の家に集まった身内の騒がしさや、並んだ食事、
その家々の台所、居間の香りを思い出す。
そして、大人になってから見る寅さんは印象が全く違う。
寅さんは男の色気に満ちている。
あの男の美学には近付きたくない、と頭の中で「コーション!ブッブー!」の危険サイレンが
鳴り響くが、身近にいたら惚れてしまって、あの気難しさに泣くであろう危険サイレンである。
昭和当時のストリップ劇場では、まだS〇Mプレイという言葉は浸透しておらず
『いぢめ』という看板で興行を行っていたらしい。
その舞台でサド役をしていたのが、有名になる前の渥美さん。
どんな時も玄人の彼ならば、真摯に仕事をしていたのだろうな、と思う。
寅さんだって真摯に演じて、沢山の犠牲をはらっていたと何かで読んだ記憶がある。
長い長いシリーズだったものね、寅さん。
ちなみに家のオットは生まれも育ちもアメリカ・ニュージャージーっ子だが
好きなアニメはティーンの頃から『銀河鉄道999』である。
(アメリカでは40年程前にケーブルTVでたまにやっていたらしい)
今はDVDも全巻持っている。
週末の夜遅くなどよく見ていて、あの「ワ~ワ~ワワワ、ワ~ワ~」という
メーテルが物思い中っぽい音楽がオットの部屋から鳴り響いているので覗くと、
必ず涙ぐんだオットが見られるので
「お、センチメンタルじじい!」と一声かけるようにしている。