日々

日々

とくになし

7月は相変わらず人の出入りが激しい夏の我が家であった。

 

もう勘弁して下さいよ…

何故か鼻水が止まらないのだが、風邪という感じではない。

ス ト レ ス 鼻 水 だな。

私の鼻が不満を訴えているに違いない。

鼻と精神が直結しているのだろう…マイ鼻よ…

 

そういえば私は非常に匂いに敏感だ。

 

アレは我が家が建ち、夫と盛り上がりつつ迎えた入居日の事。

玄関に立った私は不動産業者の営業担当のジョッシュに

「あら?ガスくさいよ?」と告げた。

 

無視された。

 

再度「ジョッシュ!夫!ガスの匂いがするんだよ!」と声高に告げた。

 

ジョッシュは薄いブルーの瞳で玄関ドアを注目し

「ドアだね」などと言い、夫は「ガレージドアは自動にした?」

となどと言い合い2度にわたって私の質問は無視された。

 

なぜだ…

もしや私はノドでも掻っ切られているのだろうか…

かまいたちにヤラレタのか…

私は黙って次の発言チャンスを待った。

 

ドアを開け「奥様が最初にお入り下さい!」と言い

ウソくせぇレディファーストの仕草をする夫とジョッシュを

矢沢永吉なみの三白眼で眺め入室。

 

室内に不備がないか調べつつ、玄関先に再度立つと

やはりガスくさい。

数回「絶対にガスの匂いする!!」と告げ、やっと彼らは反応した。

が、男2人は「マミの勘違いだよー全然匂いしないよー」と

なだめるように言ったのだ。

 

 

一ヵ月後、コミュニティ定期のガスの点検員が来た。

 

『アメリカだとどんな風に点検するんだろ?』と好奇心満々で

見ていた私に「ほ~らシャボン玉だよ~」とニッコリしながら

点検員のオッサンは謎のスプレーを己の指先にふきつけ、

ぷわーんといくつかのシャボン玉を飛ばして見せた。

 

何なんだ。サービスなのか。まあいい。

 

真顔でジッと飛んで行くシャボンを見つめ「はい、これはシャボン玉です」

とハッキリ言い、点検オッサンの次の作業を待った。

 

我が家のガス管はフロントヤードにあり、通りからは見えないよう

植木に隠れ仕様になっている。

そのガス管全体にシャボンのスプレーをドバっと吹き付けるオッサン。

 

すぐにブクブクと泡がたった。

そして、継ぎ目から、ぷわ~んと鼻ちょうちんの様に大きな泡が。

 

「 漏 れ て る ね 」

オッサンはキッパリと言った。

 

やっぱり ガ ス 漏 れ してたんだよ!!

 

私は植木をかきわけ、オッサンのもとに駆け寄り

「そうでしょ!?匂いしてたんだよ!ジョッシュも夫も

バ カ 鼻 の ク ソ 野 郎 なんだ!」と

興奮のあまりにオッサンの腕をつかみながら叫んだ。

 

オッサンは驚きつつも私のグチに付き合ってくれ、

『ガス漏れあり』『修理済み』『再点検日』などの書類に記入し

「不動産屋にクレームしちゃえ」と励ましてくれたのだ。

 

オッサンが去った後、速攻でジョッシュと夫に

「ガス漏れしてたよ!言ったじゃん!ガス漏れしてたんだよ!」

と文句の電話をした。

 

クソ野郎2人の反応は「へ~そうだったんだ」くらいだったが

私は自分の嗅覚に絶大な自信を持ち、警察犬を見かければ

「ワタシらプロの鼻で生きてるもんな!」と目くばせする位に

嗅覚においてシンパシーを感じている。

 

…と、いうくらいに私は自分の身体の中でも 鼻 だ け は

信頼していたのだが、この数週間は頼りにならず

「そぎ落とすぞ!」と我が鼻を叱咤激励しているのである。

 

 

 

さて、7月4日の独立記念日、お嬢は初めてパーティーのホストとなった。

お嬢のゲストは11人。

家庭でのパーティーでおもてなしをするホストを体験するには良い機会だった。

これから若い大人となるお嬢には必要なスキルだ。

 

お決まりのBBQは夫が炎天下の中、黙々と肉を焼く予定。

お嬢は前日から不機嫌な顔で、焼きタコス用のお肉の煮込みとパイを作った。

ホスト役が不安だったらしい。

 

当日、私は簡単なサイドメニューを作りながら

テーブルセッティングや掃除、ゲームや裏庭のウォータースライダー、

プールに行く準備などなどいつもは私がやっておく事をお嬢に指示。

 

のんびりマイペースなお嬢には、少々面倒だっただろうが

今回は『お嬢とその友人達の為のパーティー』なので

今後の事も考え頑張ってもらった。

家庭内のこじんまりした食事会なので、そんなに気張る必要はないし

何より私はもう3年ほどで還暦、すでにガタガタなのだ。

 

準備は整った。

まだまだ蒸し暑い裏庭で、夫は汗だく&煙にまみれて

ハンバーガー用、ステーキ、ソーセージ、焼き鳥とお肉を焼いている。

お嬢の為に張り切っている。

見かけは少々取っつきにくい頑固ジジイだが、夫は本当に偉い人だ。

 

午後になり、続々と見事なタトゥーに ビ キ ニ で登場する

ワガママ・ボディで褐色の娘さん達。いや~壮観だ。

 

そして様々なボディミストや香水、ヘアーオイルの香りが混ざって

室内は一気に良い香り。

空港の免税店みたい。

スメハラなんて言葉があるけれど、私はこういう匂いが大好き。

 

娘さん達は来て早々にカウンターに並べておいた皿を見て

「何これ!超dope!」と言いながら日本のスパゲティサラダと焼きおにぎり、

タコさんウインナー、アメリカでも流行っている日本のタマゴサンド、

キムチ、をあっという間に食いつくし、私を喜ばせてくれた。

 

他に私が作ったサイドメニューは、エビマヨ、カラードグリーン、からい枝豆

サラダ、ひき肉カレーくらい。

冷蔵庫やオーブンから出して並べていくと、ノンストップで喋りながら

どんどん食べて賑やか。

上沼恵美子さんが20人くらい居る感じ。

 

 

「お肉もどんどん焼けるよー!今から焼きタコスもつくるよー」と

お嬢は慌ててフライパンを振り回しつつお喋りに参加し、ゲストの飲み物

にも気をつかい見事にホスト役をこなしていた。

 

食べてプールで遊びゲームに興じ、お嬢の姪っ子(3歳)に付き合って

家中でかくれんぼ、踊ってはまた食べてひっきりなしのお喋り。

ノンアルコールのホームパーティーなのに何だかずっとワサワサしている。

 

夫はその中の4人のJD(女子大生)とキャッキャ話し込んだらしく

途中から声がかすれ、心なしか声も顔つきも森進一のモノマネ

みたいになっていた。

が、ピチピチのJDに囲まれ(BBQ中は焼けた肉をカツアゲされてるみたいだった)

ここ数年で一番楽しそうなギラギラ笑顔だった。

良かったな夫よ。

 

そしてお嬢と娘さん達は、夜の花火を見に4㎞全力疾走したらしい。

私は9時に倒れるように就寝していた。

20代前半の女子って 絶 倫 ね。

 

 

いつも人が来ると吠えまくるソフィも見ているだけで疲れたらしく

毛だらけだが、何となく深いほうれい線が刻まれたような顔で

自分のベッドに横たわっていた。

 

翌日の朝、私はそっと後片付けをし、自室に戻った。

そしてそのまま3日間完全に 寝 込 ん だ 。

ソフィもチワワというより、しょぼくれた毛玉のようになって

疲れた顔で私と共に寝込んでいた。

夫は2日間フラフラの足元と日焼けとノドの不調に悩まされていた。

 

満身創痍の私と夫と犬を横目にお嬢はプールに行ったらしく

「背泳ぎで3往復できた!」と声高に報告してきて

「アンタもう恐いわ!何かコワイわ!」と怯えた私に怒鳴られ

ニヤニヤしていた。

 

疲れ果てた独立記念日。

だが、7月は始まったばかりだった。