焼きつつ年越し予定 | 日々

日々

とくになし

サンクスギビング、オットの誕生日、クリスマスと11・12月は大量料理の続く月。

友人一家が毎回飽きもせずに来てくれる。

肉肉ジャガイモ肉シーフードと、一人でkg単位の食材を切り刻むのだが

今年は新しい包丁のおかげで指にタコも出来ず、スイスイ。

包丁の切れ味って大事ですな。

 

去年は、姪っ子バカのスーがキッチンに隣接するリビングに居座って

イヤ~なムードを醸し出していたので、時間のかかる料理はせずに済ませていた台所仕事。

 

今年は、一人でノビノビと過ごしているので

ケーキやらパンやらと焼きまくって楽しんでいる。

 

ホームベーカリーはないので手ごねなのだが、面倒くさがりのせっかちな私。

発酵時間にはイライラし、気が狂いそうになり、ストレスで震えながら

発酵中の膨らむパンの種を睨みつけたりしている。

イースト菌よ、ドーピングしてくれ!

早く!はーやーくー!みたいな祈りでいっぱいの嫌な感じダウンタイム…

 

ケーキの生クリームなんて凄い勢いで力いっぱい混ぜるので

硬くなり過ぎたりする。

失敗して、 歯 ご た え の あ る 生 ク リ ー ム で作ったイチゴのショートケーキは

オットからも不評で、朝昼と3日間かけ私一人で食べきった。

意地でも捨てない。

優雅な主婦の午後のケーキ作り…は、パワー系のケーキ作りなのだ。

 

良い生栗が手に入った先月は、美味しい栗のケーキを作るのに渋皮煮を作った。

地獄のような熱湯をモノともせずに、入り組んだ『筋』を鬼のような形相で取り除く私を見て

オットは「ねえ、嫌ならケーキ作りとかやめれば…?」と言ってきたが

「楽しいマイホビーだからっ!ドントウオーリーだからっ!」と湯煙越しにルー大柴っぽく

怒鳴ったり。

そうして出来上がった『栗のパイ包み』は、ジャガイモの煮っころがしのような姿ながらも

味は美味しく、隣のマードは3個をいっぺんに食べて胸やけを起こしていた。

人様が美味しいと食べてくれるのって嬉しいわぁ♥

 

 

我が家でのお菓子作りは、ずっとオット担当であった。

クッキーやパイは、オットが趣味で作っていた。

人様が家に集まる時は、オットの焼き菓子で食事の締めくくりにしていたし

コージーコーナーとトップスが近所にあれば、きっとお菓子作りに手は出さなかっただろうが

ここはアメリカの田舎町。

 

田舎ながらも、大学近くにオシャレなカフェがあって、唯一そこは軽めの焼き菓子が

店頭に並んでいるのだが、高いのだ。

マフィン一個で10~15ドルなので、たまに友達と待ち合わせで行くくらい。

(日本でなら絶対に行かない。千円出すなら牛丼を食べた方が良いよ)

 

コチラの普通の町中で並ぶスイーツと言ったら…

チーズケーキは粘土に砂糖を混ぜ込んだような邪悪さで

マカロンは婆さんの仏壇から取り出した古いロウソクの歯触りだし、

オレオクッキーにチョコレートを叩き込み、くべれば蒸気機関車も走り出しそうなほどに

油を混ぜ合わせたチョコレートラバーズという名のチョコケーキは名物で人気…

そうそう、ヘルシーなスイーツと謳い文句のキャロットケーキは

バターと人参とジャリジャリの砂糖と呪いを混ぜ合わせた塊だ。

 

人様の作った物に批評を下すのは、誠に下品な事だと私は常々思っているのだが

ここ最近は甘い物を店先で見かけると、 心 の 中 で 苦み走った表情の石原裕次郎が

ブランデーグラスを揺らしながら「おいおい…我慢比べはやめときな…」と呟くのだ。

オットが買い物カゴに入れたクッキーを見つめながら

『あ~ぁ、目から光線が出ればコイツを焼き払えるのにな』などと夢見る初老ババア・モードなのだ。

 

ただ、アメリカのそういうスイーツは30代までなら勢いで「うまい!」と食べられるモノだ。

甘い物が好きな人なら尚更だ。

尚且つ 甘いモノ・油ものが好きな人ならアメリカのスイーツは舌に転がる幸福の塊であろう。

 

何つったって、バターのテンプラが人気の国だ。

ベーコンにはメープルシロップどっさりの人々だ。

子供は隙を見て冷蔵庫のスプレー式ホイップクリームを口に直接放り込んで

育ってきたし、セロリにはピーナツバターをねじ込み、ホリデーシーズンには

普通のスーパーで約5kg入りの砂糖が山盛りで売り場に並ぶがどんどん売り切れていく。

 

そんな状況を普通に見て日々を過ごしているのだが…

私自身、年のせいか優しい味わいの甘さが恋しい。

じゃあ自分で作るしかない。

って事で、焼き菓子・パン作りを始めたら本当に楽しいのだ。

そして、それなりに美味しい気がするので

せっかちな性分ながらも、週に2~3回程は何かしら焼いている。

 

 

この数日は焼き時間に池澤夏樹さんの本を読み返している。

硬筆な理数系なようでどこか艶っぽい情緒ある池澤さんワールドが昔からとても好きだ。

池澤さんの本の舞台はどこか南の島である場合が多かったので、夏が恋しくなる

冬場は特によく読み返している。

 

もちろん最近の作品も読みたい。

日本に遊びに行ったら本を爆買いしようと我慢しているが、実は来年の冬は

フランスに行きたいので日本行きはどうなるかわからない…

(チビチビとヘソクリしているのはこの為でもある)

ホリデーシーズンではない11月なので、フランス行きの方が安い気もするが

どうなるか…

ヴァンデグローブの応援に一人で行くのだ。

そしてフランス語はノンノンとセボンとアクアしか知らないが、おそらく大丈夫であろう。

行く前に鼻にティッシュつめて勉強するから。

食事は客の多い店で「これこれ」と皿を指させば良いし、堂々とした体格のマダムだし

どこの国でも「ありがとう」とお辞儀をすれば感謝は伝わり、文句があったら「うるせーこの野郎」で通じるのだ。

まあ、来年の年末の話しだ。

 

それまでパンを焼いたり、ケーキをドカ食いしたり、オットの好きな海老カツを揚げたりして

今日と似た日々を過ごせれば御の字である。

 

 

さて、思えば今年も馬鹿笑いで過ごせました。

毎年の事ながら、その時々の杞憂も今となっては宇宙の彼方。

ありがとうございます。

皆様、どうぞ良いお年をお過ごしくださいませ。