仙台の事。 | 日々

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方向オンチ? ブログネタ:方向オンチ? 参加中

私は方向オンチ 派!


あたしゃ方向オンチ。

運転中はオットも方向オンチなのだが、

なんでも疑うクセのある夫婦なので、カーナビまで疑い

「この先、右折です」とカーナビが言うと

「いや、信用できない」と、左折してしまいUターンしまくるのよ。

ガソリンの無駄ね、無駄。




オットの場合、歩きで知らない町をふらつくのが好きなのだけれど

「歩き」の場合は何やらコツがあるらしく迷わないそうだ。

尚且つ、記憶も良いらしい。


そんなオットの記憶の良さのおかげで楽しかった思い出がひとつ。



数年前、青森の三沢に住んでいた頃は

近隣の観光地に私の母とオット、私の3人でブラリと

出掛けたものだ。


仙台に行った時には、母と私が同時に体調を崩してしまい

夜はホテルでダラダラと過ごしていた。

で、オットは「どっか行きたいけど~ママとマミを置いては・・・」と

遠慮しつつ、ちんまりとTVなどを見ていたのよ。


そんな様子を見かねた母が

「せっかく仙台に来たんだから、デビちゃん遊んでおいで」と

そっとオットに小遣いを握らせ、私も「一人でどっか行きな!」と

吐き捨てるように言ったところ、あっと言う間に

「デビ、イッテキマス!」と、夜の仙台に駆け出して行ったわね。



数時間後、私の携帯電話に仙台ナンバーから電話があり

「デビ、迷ったんじゃねーのwww」とニヤつきつつ

「もしもーし」と出たら、

「あ、奥様ですかぁ?御主人が何を言っているか通訳お願いしたいのぉ。」

と、色っぽい声が言うじゃないの。

何事かね・・・。



電話の主は、仙台の繁華街のバーのママさん。

好奇心旺盛なママさんらしく、アメリカの事などを

オットに聞きたかったらしい。


通訳しつつ、話しているとママさんが

「奥さん、お金いらないからここにおいでよー。今夜はタダでいいからー。」

と、お誘いして下さった。

が、私はどうにも調子が悪く、どーしても出かける気にならず

丁寧にお断りしちゃったのよね。




明け方まで、たっぷり仙台の方々に優しく遊んで頂き

オットは上機嫌でホテルに帰ってきたわ。

「センダイ、すごいイイ!」

「イイヨー。もーイイヨー!」

「センエン、センエンぽっきり!」

「オカンジョー、イラナイヨ!」(お勘定)

何があったのだろう、仙台の夜・・・。

新しい日本語まで覚えてきたわよ、オット。


翌日の夜、母は早々に寝てしまい

私とオットは夜の仙台に繰り出した。


オットは昨晩ひとりで出歩いたとは言え、知らない町なのだが

やけに足取りがしっかりしている。

どこの路地裏に猫が居たかなども把握しているのだ。

すげえ、オット。


そうしたらねえ、繁華街のあちこちで

「お、デビ!」

「デビちゃん、まだいたの?」

「あ、今日は奥さんと一緒だ。デビ良かったねー。」

と、オットに声がかかるのよ。


キャッチらしきお兄さん。

キャバクラのかわいらしい花のようなお嬢さん達。

ちょっとコワモテなお兄さん達。


そのたびにオットは嬉しそうに「ハイ!デビです!」と

バカのように答えている。

一体、昨日の夜、オットは何をどうしていたのだろう・・・。



「昨日、ここに来たらねー、1000円でチューハイいっぱい飲んだよ。」

と、オットに連れていかれた所は

ホストバーだった。

ホストバーで、機嫌よく飲む黒人か・・・。


キラキラしたお兄さん達が「あーまた来たのかね、デビちゃん。」と

言いつつ、私には「テーブルチャージが1000円で・・・」と

システム説明をしていく。


「昨晩、オットが何もわからずお世話になったようで・・・」と

恐縮すると「誰も英語わからなくて、もー好きに飲んでもらって1000円にした。」と

人の良さそうなマネージャーさんが説明して下さった。

『センエン!センエン!!』・・・ここか。


ボトルを一本入れてもらい、商売のお邪魔にならないように

早々に退散したが、まさかのホストバーだったわね。




その後も、記憶力を駆使したオットに「昨日、ここも来たよ。」と

スナック・定食屋(オットはバーだと思っていた)をはしご。


雑居ビルの3階まで行ったのかと驚きつつ

ついて行った先の一件は、お座敷パブみたいな造りのスナック。

その名も「スナック・アンティーク」。

何がアンティークなのかと思いつつ、靴を脱いで

カウンターに座ったら、小柄なお婆ちゃまが

「あら・・・きのう来たアフリカの人。」とデビに御挨拶してくれた。


アフリカwww


小柄なお婆ちゃまはスナック・アンティークのママさんで

大皿料理をとりわけてくれながら

「アタシがアンティークだから、店の名前がアンティークなの」と

言いつつ

「昨日、この人『はまぼうふう』のお浸しをすごく食べてたよ。

これ、体にイイヨって教えたらイイヨーって言ってたわよ。

奥さん、こんなん作るの、家で?」と仰(おっしゃる)るじゃないの。


昨晩いきなり叫んでた「イイヨー!」は、ここで覚えたのか、デビよ!

そして『はまぼうふう』って食べられるんだ!知らなかったっす。

酢味噌で食べたけど瑞々しくて美味しかったわ。

『お浸し』好きなデビさん、さすがだ。




「ここも来た。」とオットが指差したキャバクラは

「女の私が行くと御迷惑だわよ。」と遠慮したが

入り口に居たお嬢さんが

「あー、昨日の黒人!えっと デ ロ だっけ?キャハ!」と

一文字違いの名前で御挨拶してくれて、奥からワラワラと出てきた

キラキラなお嬢さん達と「イエーイ!」と

当時はやっていたエッグポーズをとるオットに

『落ち着いた人だと思っていたけど意外とギャルな黒人だ』と

新たな一面を見出したりしたわね。


デ ロ と呼ばれながら、オットは初キャバクラを

堪能し、当時ファンだった松浦あやに似たキャバ嬢さんに

お相手してもらったらしく

「あやや居た!小さいんだ、背が!」と熱く語っていたが、この店だったのか・・・。


そして「あやや!昨日のあやや!」とオットが小躍りして

指差したお嬢さんは、なんというか・・・

日本猿が茶髪のオカッパになったような愛らしい方だった。




最後に「ここのママが美人で、昨日電話をキミにした人」と

連れて行ってもらったらねえ・・・

すっごい高級クラブ・・・。

高い。ここは高い。

支払いはクレジットカードだが来月の請求はどうなる・・・。

いや、それより、またノコノコとオットが来ても良いのだろうか・・・。



店先で立ちすくんでいると、ベルの音も軽やかに

ママさんが「デビちゃん、いらっしゃいー!」と

ドアを開けて下さった。

すかさず「ハイ!デビですう!」と、バカ一直線な挨拶をするオット。


ホントに美人ママだった。


店内は、生花が豪華に飾られ、ビカビカだ。

クセでカウンターの後ろの酒瓶を見ると

見事なコレクション・ボトルが並んでいる。(中身入りだ、もちろん)

鏡月とか、焼酎系はない。

一番安そうなボトルで、ボウモアかマッカランあたり。


もー仕方ないから、さっと飲んで・・・と思っていたら

ママさんが「奥さん、昨晩は遅くまで電話でごめんなさいねえ。」と

レミーのデキャンタを持って、席についたの。

そして「今夜は御夫婦でいらして下さったから1万円で。」と

自分のボトルを差し出して下さった。


もしや・・・オットが昨夜叫んでいた新しい日本語・・・

「オカンジョ、(お勘定)イラナイヨ!」は、ここか?



いやいや・・・そんなワケにはいきません。

昨夜の分には足りないかもしれませんが、少しは御代をとって

おくんなせい、ママさん。


この店にしては、少額ながらもきちんとボトルを一本入れさせて頂き

お邪魔にならぬように「デビ、混んできたら帰るんだよ!」と

言いつつ、美人ママさんのお顔と声とお喋りを楽しませて頂く事にした。




口元の色気ボクロがよく動き

「飲んじゃおう、飲んじゃおう!」と粋に楽しませてくれる仙台っ子のママ。

豪快で気風がいい。

が、手の動きや肩のちょっとした動きがなんとも優雅。

運の強さも強烈に感じさせる。

女が惚れるオンナとは彼女の事だ。


私達のボトルを一緒に開け、年代物のワインもたっぷり

御馳走になり、常連さんらしき男性達の席にまで

御一緒し、半べそでマイウエイを熱唱するオットに

涙する美人ママ。

(オットはマイウエイを歌うと必ず感極まって泣く寸前までいく)



さんざん楽しませて頂き、店内も6割埋まってきたので

お暇(いとま)させて頂く事にした。

ママの御好意で、互いの電話番号や住所の交換もし

「三沢に来たら連絡を」とお別れしたのよね。


帰宅後、さっそくお礼状などを送り

その後も、三沢の米空軍の航空ショーを見にいらしたり

家が仙台に遊びに行くと、お昼を御一緒したりと

ご縁が続いていたの。

我が家がアメリカに引っ越してきて

彼女とは連絡が途絶えてしまったけれど・・・。




あの震災のニュースがあって、

私とオットはものすごく動揺した。


どんな小さな路地裏にも、ちょっと素敵なバーや食べ物やがあり

「御旅行ですか?」と親しげに話しかけて下さった人ばかりが

思い出される仙台。

中心地は都会なのに、緑が深く、吹いている風まで

透明感があって気持ちの良かった町並み。


夜ともなれば、平成のこの御時勢なのに

目に力のあるや○ざのオッサンが元気に威張って

繁華街を闊歩する横を、学生風の集団が楽しそうに

歩いている。

赤ら顔で笑いあうスーツ姿の大人達。

野良猫のエサ皿が路地のあちこちに置いてあってね。

これは、すごく活気のある良い町の証拠だ。



私とオットの記憶の中で仙台は、そんな町だった。

だから報道で見た数々の写真で、何度も胸が押しつぶされたの。


いつかオットと日本に長期滞在できたら・・・

また仙台に行くわよ、絶対。



















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