出張の途中、どうしても寄りたい気持ちに駆られました。
滞在時間わずか20分でしたが、満足です。
住友の力の源泉、別子銅山東平地区。その威容から東洋のマチュピチュとも称されます。
私が見てみたい気持ちに駆られたのは、工場街出身で産業遺産が好きということもありますが、それ以上に、
住友財閥二代目総理事伊庭貞剛を尊敬しているからです。
新居浜製錬所の煙害問題に取り組み、別子銅山を植林、企業のCSRの先駆けと言われ、かの田中正造をして、「住友に伊庭あり」と言わしめました。
私がこの人に出会ったのは、前職の雑誌で「後継」というテーマに取り組んだときです。
伊庭の先任、初代総理事広瀬宰平は「住友中興の祖」と呼ばれたカリスマ。しかししだいに老害も目立ってくるようになりました。先の煙害問題は深刻化、労働争議も多発、社内権力闘争も激化…。
その彼に鈴をつけて、引退させたのか伊庭。伊庭にとって広瀬は住友に引っ張ってくれた恩人でもあり、大叔父にもあたります。しかし伊庭は、会社としてのあり方を重視しました。
「事業の進捗発展を阻害するものは青年の過失ではなく、老人の跋扈である」
は、伊庭のことば。その言葉が示すとおり彼は58歳ですべての役職を後進に譲ります。
伊庭が晩年を過ごした邸宅は、出身の近江の国、湖をのぞむ高台にあったそうで、現在は東海道新幹線がそのすぐ側を通ります。
私は出張でここを通過するたび、いつかゆっくり見てみたいなと思っていました。
いまは住友グループの持ち物で一般公開はかなり限られていますが、いつか実現したいものです。
そのいつかの思いが、今回ひとつ実現しました。
まあ、ほんと駆け足でしたが…(笑)。