朝、テレビをつけましたら、セブン&アイの鈴木敏文会長と歴史学者の磯田道史氏というユニークな取り合わせが目にはいってきたので見ておりました。

鈴木会長の視点はブレがなく40年以上同じことを言い続けています。

経営者はブレてはいけない。これは鉄則です。あの手この手をやり始めるとどんどん負のスパイラルに入る。

外食から教育産業にうつられる有名な社長さんなどをみるとほんとそう感じます。

一橋の楠木教授もまとめていましたが、鈴木会長の言葉は基本であり原則、当たり前のことしか実は言っていない。でもこれをやり続けるのが非凡。結果から入るのは本来順番が違う。

これもその通りですね。学者やジャーナリストは結果からプロセスをたどり再現性や共通点を見出すのですが、そうなると実は当たり前のことしかでてこない。

プロセスには千差万別のストーリーがありますが、結論はシンプルです。結論は原則です。これだけを取り出してみてもなにも変わらない。原則に反転回していくためにはリアルな現実に立ち向かう意志と組織力が不可欠です。

さて、鈴木会長の発言で、さすがと思ったのが、

「オムニチャネル化はリアル店舗の優位性が際立つ。そしてリテールのブランドがますます問われる時代になる」

少々意訳していますが、これは私も英国の擬似オムニワールドでみてきた現実です。

オムニチャネル化が進めば、ネット流通がどんどん飛躍すると考える人が多いのですが、

実はそうではない。

オムニチャネル化が進めば、リテールブランディングが進み、この流れに乗れないところが勝手に脱落していく率が高くなるのです。

禅問答ではありませんが、結果ネット流通を既存リテールがどんどん組み込み、リテールブランドを強力なものにしていきます。

だからセブン&アイはマスメディアにも膨大な広告投資をしています。マスメディアを通じたマインドシェア獲得はこの過渡期には有効です。

ますますナショナルブランドはセブンとのコラボを考えるでしょう。ちょっといじわるな見方をすれば、ある意味、ナショナルブランドはセブンのブランド価値上昇に助力しているということも言える

しかし、厳しい取引条件はあるにせよ、セブンには売り切るチカラがある。そのチカラとあいまってリテールが商流を圧倒的に支配するようになります。

鈴木会長はさすがに本質を見抜いています。

ただし、意図的に避けているのか、オムニチャネル化は業態や商品による差別ではなく「顧客軸」による差別化が進むことになります。

だって、お客が本当に美味しい「鮭の炭火焼きおにぎり」を食べたいなら、新潟の道の駅でしか売っていないおばあちゃんの手作りおにぎりを1日で届けてもらうという自由を手に入れることが「オムニチャネル化」の行き着く先だからです。

すぐ食べられる、飲みものが冷えている、ひきたてのコーヒーが飲める…この徹底したコンビニエンスの追求はメーカーの商品価値を相対的に引き下げるでしょう。だから缶コーヒーはどんどん売上が下がる。メーカー缶コーヒーもプレミアム化に進もうとしています。

でも、本当にひきたてのコーヒーが飲みたいなら、プロ仕様のサーバーのレンタルもオフィスや家庭ではじまるでしょう。

オフィスでセブンクラスのコーヒーが会社の福利厚生で飲めるならこれほど有難いことはありません。

つまるところ商品のプレミアム化とコンビニという業態特性は実はオムニチャネル時代においては武器にならない可能性がある。

そこを天下のセブンイレブンがどう乗り越えるのか。これが見たいですね。

あっ、でも磯田さんを絡ませる意図ってどこにあったんですかねえ(笑)。個人的にはおない年ながら大ファンなんですが。

オイシックスの高島社長もメディア戦略にのってきましたね。

蛇足、

どこかの経済雑誌でセブンに買収されたニッセンのメリットは、ニッセンカタログがセブンの店舗で多く置かれるようになったことだ…とありましたが、まあニュース解説屋であればこの程度でいいのですが、

まあ、大局を読む媒体ではないですよね。




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