レストラン、ホテル、百貨店の偽装表示から、楽天のVセールまで、商人の信頼を揺るがす事態が広がっています。
楽天のVセール表示もすごいですね。
iPhoneを40万円超の定価にして、割り引いて、本来の定価9万円で売る・・しかも旧型の4S。
笑ってはいけないのですが、たしかに77%引きになるように設定されています。すごい発想ですね。
まあ、これなどはある意味「やらせ感」が漂いますが、定価をつり上げて、現定価で売る。
また現定価より少々高い値段で売る・・もはやなんでもありです。
レストラン、ホテル、百貨店の偽装表示は、当該お客様に返金するということで対応していますが、
私から言わせれば、まったく事の重大さを認識していない人間、組織の集まりです。
コンプライアンスのコンサルタントさんたちの的確な指示なのでしょうが、かれらはとても重要なことが抜け落ちています。
というのは、楽天セールのとんでもテナントも同じですが、
「真っ正直な商人の真正な値付けに対しても世間の目がその正当性を疑うように仕向け、
まじめな商人の信頼をも揺るがしている」
ということです。
これだけの事例がゾロ出てくれば、もはや個別企業の信頼問題で済む話ではありません。
ですから、あなたのお店を利用したお客様にただ謝罪して済む話ではないのです。
ほかのまじめな商人、ひいてはまじめな商いを利用している世間一般のお客様にも謝罪してしかるべきではないでしょうか。
再び「都鄙問答」をひきますが、
問うて曰く、「然れども、世俗に商人と屏風は直ぐには立たずと言へるはいかなることぞや」
(しかしながら、世間で商人と屏風は曲げないと立たないという言葉があるが、どういう意味か)
答えて曰く、「世俗のことにかような聞き誤り多し。まず屏風はすこしにても歪めばたたまれず、またこのゆえに地面平らかならざればたたず、商人もそのごとく自然な正直なくしては人と並びたちて通用なりがたし。これを屏風の直ぐにたとえるなり」
(世間の俗語には、そのような聞き間違いが多く、誤用しています。屏風はまずすこしでも歪みがあればたたむことができず、このため床が平らかでなければまっすぐ立つこともできず、屏風の用をなしません。商人もそのように平常の心が正直でなければ、世間一般の方々とともに人としての信頼を得て、商売を続けることはできません。このことを屏風のまっすぐさにたとえているのです)
「商人と屏風は直ぐにはたたず」
・・商人と屏風は曲げなければ立たない(ずる賢くなければ商売はやっていけない)
これは本来、江戸時代も横行した不正な商売の多さから、世間が商人に与えた蔑視的慣用句です。
この揶揄を逆手にとって、屏風も商人も真っ正直でなければ、役には立たない。商人は正直さをもって商売しなければ世間の信頼を得ることはできないというロジックを展開しています。
まさに現代、不正な商売が横行する中で、石田梅岩が説いた商人の道は暗闇を照らす一筋の道になるでしょう。
私の古巣の創業者倉本長治は、「昭和の石田梅岩」と呼ばれた人でした。
戦後商業復興期に、まさに「都鄙問答」など埋もれた商業倫理を掘り起し、独自の解釈を加え、商業復興を志すあまたの商人たちの理論的、精神的支柱になった方でした。
いまそのDNAを受け継ぐ商人の皆さんの器量が問われています。
ぜひ言ってほしいものです。
「愚かな商行為で社会を欺く者は真の商人にあらず、値付けは商人が命がけでつけるもの。商人の信頼を取り戻すために愛と真実の商いに我々は徹する」と。