俺のフレンチ、イタリアンなど、「俺の」シリーズで再び脚光を浴びているブックオフ創業者の坂本孝さん。
わたしも15年ほど前にフランチャイズビジネスの特集をする際、なんどかインタビューをさせていただいたことがあります。
原価率30%前後が常識の飲食業界で、60%に高めて、リーズナブルな売価で提供する・・
これが「俺の」シリーズの成功要因と言われています。
リーズナブルな売価とは、
・一流調理人の知恵と工夫
・路地裏などの二級、三級立地
・立ち食いなどの提案
などで実現されています。
「立ち食い」というのはIKEAなどでいう「セルフで組み立て」「セルフで運んでもらう」と同義です。
これは、お客様が喜んで参加できる仕組みをつくれるかどうかが、成否の分岐点です。
そういう創意工夫のなかで通常の2倍の原価をかける。
大事なのは、原価額ではなく、原価率。
販売数量が出るようになると、原価額は高くなりますが、原価率が下がります。
ですが、ブランド力を高めるためには、あえて原価率をアップさせる。
つまりよりよい素材開発、原料をつかうことで品質がアップ。
店舗設備費、物流費もずっとチェックしながら、販売数量を維持してきたわけですから、売価は抑えられる。
並みのビジネスモデルは、原料が上がれば、すぐ売価に反映します。
これではお客さんはつきません。
人気になればなるほど、原価率を高めて、物流コストなど見えない努力を重ねて、売価を変えずに、品質を高めていく。
これがチェーンストアにおける商品開発の王道のひとつです。
「俺の」シリーズは、チェーンセオリーをうまく外食に生かしたわけですね。
本来はここに人件費への還元も不可欠です。
調理の創意工夫によって、お客がついたことに対する敬意をこめて給料をアップする。
これがもうひとつのブランディングにつながると思います。
正のスパイラルをどうつくるのか。
これが小売業、流通業の使命のひとつだと思います。