小売民俗学ってなんですか?
と、時々聞かれることがあります。
この写真は、愛媛県今治市にあるドラッグストアの売場です。
参天製薬さんの目薬「メディカルG」がボリューム陳列されています。
この目薬は高機能高価格帯に位置づけられ、夏場の紫外線ダメージの修復に効果があるという形で打ち出しています。
ここまでは、メーカーさんの全国共通のキャッチ。
しかし、今治のこの店舗ではこの目薬が紫外線ダメージの修復効能以外のある理由でよく売れています。
今治市といえば、タオル産業が有名ですが、もう一つ造船産業が著名です。
造船産業の関連産業が揃い、溶接業も多数軒を連ねています。
溶接業に携わる人々は、職業柄、目を痛めがちです。
だから、高機能目薬が求められるのです。
製鉄、溶接を生業とする人々は古代より高温の高炉を覗くことから片方の目を痛めがちであり、また風をおくるふいごを踏むため片足を痛めることがあります。
つまり「隻眼片足」。
山奥で製鉄を生業とする集団は異形であり、これが様々な神や怪物などの神話、伝説の原型を生み出す元になりました。
衣食は地域独自の風習が色濃く残っていますが、ドラッグストアで扱う商品もまた、地域の特性によって売れ方、売り方が変わるのです。
食は「恵方巻き」などが有名ですね。関西のある習慣を全国チェーンコンビニが、販促に利用して広まりました。
それも面白いアプローチですが、
小売民俗学は、
商品の売れ方、売り方を地域の古くからの生活習慣、風習に照らし読み解き、
商品と消費者の根源的な結びつきをあきらかにし、
商品の持つオリジナルコード、消費者行動の文脈を解読することを目的とします。
その背景には「消費」という人間の本質的な営みをあきらかにしたいという考えがあります。
もう一つ大切な視点があります。
この領域は乖離しがちなメーカーマーケティングとリテールマーケティングの接点でもあり、
リテール、つまり小売の現場ではたらく人々の知の集積がなくては成立しないということです。
さて、このちょっと捉えどころのない学問。どこで研究しているのか?事例は丹念に収集され体系化が図られているか?
私の知る限り、ほとんどできていないようです。目下私しか提唱していないようですし(笑)。
民俗学、文化人類学のなかに消費のテーマがあり、断片的に扱う人はいますが、事例の数も乏しく、体系もありません。またリアルビジネスにつながる再現性も検証されていません。
この学問志向は、リアルビジネスにおけるIDPOS活用推進にもきっと役立つデータベースになると確信しています。
データベースともなればすぐれた工学の知も不可欠です。考古学のアプローチも大切です。余談ですが、IDPOS分析の我が国の第一人者奥島晶子先生は東大考古学のご出身。
土塊から生活を読み解くのが考古学ですから。
道無き道ですが、面白い。
道がないなら自分がやるしかない…。
改めて、自身のライフワーク宣言します。
ぜひいろんな方面からのご参画があるとあり難いです。
一緒に新しいプラグマティズムを開発していきましょう!