本日、日本リテイリングセンター(JRC)の政策セミナーにて勉強させていただいています。


政策セミナーは、日本における小売流通業のマクロデータを把握する点で唯一といってもよい機会です。


統計の開始は1969年。43年の激動期のリアルな数字をずっと追いかけているのです。


政府統計ではなく、民間のコンサルティング企業が行っている点でも、ほかに例がないでしょう。


ですから、小売流通の上場企業トップが、社員と同列で学びにいらしゃっています。


この数字は、ほんとうに経営戦略に不可欠なマクロデータだからです。


たとえば、小売業の世界では「坪効率」という数字があります。


これは年間の一坪あたりの「売上高」です。


これは小売業にとって、


どれだけのコスト(人的・設備的)がかかり、利益が出ているのか基本の単位になります。


この平均値を覚えておけば、店舗の見方や業界ごとのさまざまな打ち手がわかります。


しかも10年スパンの経年変化を見ることが大切です。


ちょっと主な業態別に挙げてみましょう。


左の数字が2000年、右が2011年です。


百貨店 376万円→288万円(-88万円)


総合スーパー 189万円→146万円(-43万円)


ドラッグストア 253万円→177万円(-76万円)


ホームセンター 152万円→87万円(-65万円)


スーパーマーケット 378万円→316万円(-62万円)


生協 357万円→290万円(-67万円)


カジュアル専門店 252万円→223万円(-29万円)


婦人・子供服 334万円→129万円(-205万円)


靴・鞄 335万円→165万円(-170万円)


メガネ 269万円→248万円(-21万円)


家電 537万円→265万円(-272万円)


家具 118万円→79万円(-39万円)


コンビニ ○○万円→350万円(-)*コンビニは10年前のデータなし


この10年間で、全体的に下がっていることがわかります。


とくに下げ幅が大きいのは、


家電、婦人子供服、靴・鞄。


家電はすごいですね。液晶テレビが、42型で5万円を切る時代ですから、


大変な時代にはいっています。


しかも社数は、この10年で37社から6社に。


寡占化が一気に進んだ業界です。


ですから、各社、「家電」とは異なる領域に進出しようとしています。


郊外のチェーン店では、食品から医薬品化粧品まで、


都市型チェーンは、いまは飲食やアパレルなどの店舗ですが、今後ヘルス&ビューティ、調剤、さらには医療モールなども入れ込んでいくそうです。


ヤマダ電機さんなどは、リフォーム、エコ住宅、電気自動車分野にも進出しています。


これらの動きは、この10年の大激変を受けての施策だったわけですね。


つまり従来の「家電屋」では生き残れないと考えています。


総合品種系では、


百貨店、ドラッグストアが下げ幅の大きな業態の代表。


ドラッグストアも実は大きな経営転換を迫られている業界です。


社数も、この10年間で43社から25社に。


一時期に比べるとM&Aも落ち着いていますが、


まだまだ淘汰される業界です。


意外に下げ幅が小さいのは、


カジュアル衣料や、メガネ、ホームファッション。


こちらもユニクロさんやZoff JINSさんなど有力企業がひしめき、価格破壊が進んだ業界と言われていますが、


それほど落ちていない。


しかも社数もほとんど変わっていないので、実は安定的な経営環境にあると言えます。


ホームファッションもニトリさんが出てきて久しいですが、まだまだ有望な分野です。


「家ナカビジネス」は内需型の深掘りしていくべき領域です。


「坪効率」が落ちれば、コスト構造を変えないかぎり、また商品政策を抜本的に変更しない限り、利益経営は不可能です。


この10年でその施策を打ち、成果を挙げた企業のみが、残存者利益を得ているという見方もできます。


さて、今我が国の小売業のリーディングともいうべき業態である「コンビニ」ですが、


コンビニは350万円ですが、これも10年前は400万円前後あったと推察します。


これは、繁盛店と言われるコンビニは大体1店舗1億5000万円から2億円超という数字によるものです。


コンビニもその意味では50万円から100万円くらい下がっているかもしれません。


こういうマクロの数値を把握しておくと、


たとえばこんな見方もできます。


最近、コンビニは駐車場スペースを多く確保した店舗のリプレイスメントを積極的に進めていますが、


駐車場1台当たりの平均売上という数字もわかるようになるのです。


もちろん徒歩、自転車の売上もありますので、あくまでも考え方です。


店舗面積は30坪ですから、店舗売上平均は1億500万円(30坪×350万円)。


たとえば、最近は東京でも、かつての5-8台から、10ー12台にシフトしています。


かりに8台ですと、1台1312万円。


12台と4台増やせば、5250万円。


かつての繁盛店くらいの数字に引き上げられます。


まあこんな単純な計算ではないでしょうが、


コンビニとしては駐車場を1台増やすごとの効果測定はかならずやっているわけで、


そのノウハウが確立してきたからこそ、いま都下の郊外でも駐車場を広く取った店舗リプレイスがどんどん行われているのだと思います。


土地の値段、リース相場(保証金)も下がっているのでしょう。


さらに最近は、プライベートブランド(PB)比率も格段に上昇しています。


「セブンプレミアム」も美味しい惣菜が増えました。


よく考えているなあというものも多い。

 

ちなみに、コンビニ向けサプライヤーさんの投資金額が、テキストに一覧してありました。(*初出は日経2011年8月29日)


プライムデリカ(セブンイレブン向け)48億円


わらべや日洋(セブンイレブン向け)1億円


三菱食品 (ファミリーマート向け) 6億円


設備投資金額は、生産量の拡大と、品質改善のための増床、新機器導入、衛生管理などが反映されています。


こういうことができるからコンビニの惣菜や加工食品のレベルはどんどんあがっていきます。


最近は、「お願いランキング」などマスメディアの使い方も上手ですよね。


こんなふうにマクロデータ(経営指標)をミックスして、


ミクロ(商品・売場)を見ていくと、またいろんな発見があります。