中国流通にすこし詳しい方ならだれでもご存じ、「TAOBAO」。
中国のインターネットショップモールです。
B2BとB2C C2Cもありますから、日本でいう楽天さんやヤフーショッピングを足したようなものです。
中国のネット流通は、2010年で5231億元と発表されています。
「TAOBAO」の取引規模は2010年で4000億元であり、実に8割がこのサイト上で取引されています。
実はこのTAOBAOですが、昨月、大きな事件がありました。
それは、TAOBAOが出店保証金と技術支援料の値上げを含む新規則を施行したことに起因します。
TAOBAOとすれば、ネット流通でたびたび問題となった、粗悪品や偽物、誤注文の発生が著しい中小規模業者のハードルをあげて、
健全なネット流通の育成を考えたものでしたが、
新規則の施行期間の短さ、撤退業者への賠償なし、またコミュニケーションの悪さが手伝って、
不満を持った約7000の連合店が、「TAOBAO商場」内のほか大手店舗に攻撃を仕掛けたのです。
それは一斉に大量注文をして、返品し、悪評価をアップするというもの。
すさまじいです。
「TAOBAO」は7日間無料返品という制度もあったので、そこをついたわけです。
日本のユニクロも被害に遭いました。
この店舗の消費者による評価システムも、優良業者を選択する際に、重要な要因となるのですが、
不満の7000の連合体は新規則と評価システム撤廃を訴え、杭州の本社まで抗議しにいきました。
まあ、評価システムがあれば、うさんくさい業者は撤退を余儀なくされます。
ただ、7000の連合体にも言い分があって、
自由な商取引の場があり、「安さ」があるからこそ、ネット流通利用者が大幅増加したのであって、ネット流通の発展は自分たちが寄与するところ大であると主張しました。
事態を重く見た中国政府も、商取引におけるガイドラインのあり方についてちかく発表するとのこと。
これは、一方でこれまでネット流通取引にかけられていなかった税金をとる方向で動き出した政府への反応という見方もできます。
インフレ真っただ中の中国市場で、なにをもって消費市場活性化を維持するのか。
「安さ」なのかそれともバブルの尾っぽのごとき「上澄み」消費なのか。
格差が広がる中で、安定した中高所得者層のパイをどう増やすのか・・。
興味は尽きません。それは間違いなく日本経済にも影響します。
中国市場の消費動向をさぐるうえで、日本の大手小売チェーンも有力メーカーも無視できない存在になった「TAOBAO」。
この事態がどう動くのか、要注目です。
たとえて言うなら、公正なルールづくりによるたてまえの健全成長と消費の獰猛な力に頼らざるをえない本音の経済事情との相克とでもいうべきでしょうか・・。
このレポートの詳細は、上海在住の流通コンサルタントシン・チェさんより、月刊MD1月号にて掲載されます。
アジア市場の各動向についても、独自の視点でホットな情報を提供していきたいと考えています。