日本でもおなじみコストコ。その創業者ジム・シネガル氏が引退したそうです。
月刊MDの常連筆者である鈴木敏仁さんの連載原稿でわたしも遅ればせながら知りました。
この写真は、入間倉庫店がオープンしたときのショット。
公式インタビューは一度もできませんでしたが、入間のときはパーティの立ち話ではじめて一言ごあいさつした記憶があります。
鈴木さんの原稿に曰く、
全米トップ10小売業、最後の創業経営者が勇退する・・とありました。
世代は異なりますが、ウォルマートのサム・ウォルトンとも並び称せられる米国小売業界の巨人でした。
小売業を心の底から愛し、常に自家用ジェットで世界の店舗をめぐり、スタッフに声をかけ続けたと言います。
後継者問題にも心を配り、ジム氏はウォール街を動揺させることなく引退したそうです。
報道もごくわずか。世界でも指折りの大富豪のはずですが、その私生活は質素そのものだったそうです。
詳細は次号の月刊MDの鈴木さんの連載原稿をお読みいただきたいのですが、
ひとつ鈴木さんに教えていただいたエピソードを。
コストコは、ホールセラークラブという業態を発展させた企業ですが、その大容量、ユニットプライスの最低価格訴求モデルは、メーカーからは、嫌われることもあったようです。
コストコの安さは販売管理費率、物流コストの極限まで合理化させることで実現した安さです。
かつてクロックスやビルケンシュトックが、コストコを取引することを嫌い、商品を撤退させようとしたとき、
コストコは並行輸入で商品を揃えたそうです。
理由はお客がそれを必要としているから。
こういう巨大企業ならストアブランドを十分つくれるはずですが、小売業の意地というか、強引なポリシーが前面に出てくるのも面白いなと感じたものです。
さて隣は息子のマイク氏。マイク氏はジャパン立ち上げ時のトップで、2度ほど公式インタビューしたことがあります。
とくにウォルマートが西友を買収したとき、どう思うかという質問をした際、
「ウォルマートが本国そのままの方法で進出するなら、将来的に日本市場の一角をその圧倒的存在感をもって占めるだろう」という卓見を残しました。
「そのままの方法で」というのがミソです。
2010年代になってウォルマート西友はじわりとその存在感を増しています。
メーカーによっては、デファクトスタンダードであるPOSデータをオープンにして、KPIを設定し、返品をせず売り切ってくれることを「是」と考える傾向もでてきたということです。
ウォルマート、そしてこのコストコという企業は、業態としての低価格モデルばかりが注目されますが、その学ぶべきところの本質は「取引制度」の運用法です。
これは今後の日本の流通業改革の肝です。この「取引制度」運用を制するものこそ、次世代のマスマーチャンダイジングを制すると思います。
もちろん業態論も同時に考える必要がありますが・・。
ジム・シネガル氏を扱った和訳されていない書籍がいくつかあるようです。
すこし落ち着いたらじっくり読んでみたいなあと考えています。