「仏病」ってご存知でしょうか?
いまわたしはこの病気にかかっています。
けっこう重症です。
毎年、夏のおわりになるときまってかかるのです。
とくに命にはかかわりませんが、
精神的にかなり重くなってしまいます。
「仏病」とは、
「フランスに無性に行きたくなる病気」です。(笑)
すみません・・。
とくにからっとした夏空のもと、鱗雲が登場し、
夕暮れにすこし涼やかな風が吹いて、ふと見渡すとプラタナスなんかがあったりすると、もう大変です。
もう20年近く前の短期留学ですが、
南仏エクスアンプロヴァンスで過ごした時間って忘れられないんですねえ。
昼間からお酒を飲んで、道行く人を眺める・・という体験をしたのもエクスです。
9月の終わりになると、プロヴァンスはミストラルという季節風が吹いて、この嵐が過ぎると秋がやってきます。
エクスは、セザンヌの故郷です。
エクス郊外にセザンヌが生涯描き続けたサンヴィクトワールという山があります。
ひとつのモチーフを生涯描き続けるというのはどんな意味があるのだろうと、留学中は恥ずかしながらまったくわかりませんでした。
その解を知ったのは、社会人になってずいぶん後です。気づくのが遅すぎですね(笑)。
尊敬する吉田繁治先生に教えていただいたことが懐かしく思い出されます。
セザンヌは、ひとつのモチーフに対してさまざまな表現の方法を試していたのです。
セザンヌは、山やりんごといった絵画のモチーフとしては、何の変哲もない素材を選びました。
ですが、セザンヌの描いたりんごは、本物のりんごよりも、山は本当の山よりも私たちの心の中に、圧倒的な存在感をもって訴えてきます。
それがセザンヌの見出した「方法」です。
吉田先生は、ウォルマート創業者サム・ウォルトンを表する言葉として、
「素晴らしい仕事があるのではない、素晴らしく仕事をする方法がある」という言葉を選びました。
*これはアメブロのわたしのプロフィルにも掲げています。
わたしもひとつの仕事にさまざまな方法を試して、よりよく仕事していく方法をつかみたいと思います。
さらに言えば、ひとつの主題を繰り返し繰り返し、掘り下げていく方法で、より違う価値を提供できないものかと考えます。
仏病にかかるたびに、エクスの町とセザンヌ、そしてサンヴィクトワールを思い出します。
そして、仏病が実は、仕事の本質を知った時の感動を、忘れないためのものではないかと思うのです。