朝4時ごろから、なでしこジャパンの試合を見て(ちょっと寝過ごしました・)、はらはらドキドキの2時間半をすごし、
そのあとはゆっくりコーヒーを飲みながら勝利の余韻にひたっていました。
わたしが愛読しているブログの先生方も早い早い。藤村先生はほぼリアルタイム。作野先生もさっそくランチェスターに落とし込まれていました。
で、わたしもメールをチェックがてら、ブログを更新しようと思ったのですが、iPhoneから第一報は書いてしまったし、午後から出かけないといけないし・・どうしようかなあと思っていたのですが、、前から更新したかった「マイベストシリーズ」を。
というのは、久しぶりに「ブラック・ジャック」の名作OVA「サンメリーダの鶚(ふくろう)」を見たんですね。
このシリーズ、惜しまれて亡くなった出崎統監督、音楽東海林修・・通にはたまらないスタッフでつくられた傑作群。
この「サンメリーダ」は、原作は「過ぎ去りし一瞬」なのですが、OVAバージョンはキャラ設定が大幅に異なっています。
内容は、まだ見ていない人のためにとっておきますね。このOVAシリーズほんと素晴らしいですよ。
で、きょうのマイベストは、手塚治虫大先生。松本清張と同じく、あまりもの膨大な作品数で、ベスト5なんてなかなかまとめられないのですが、あえて挑戦!
1)『アドルフに告ぐ』
第二次大戦下の日本とドイツの運命に翻弄された3人のアドルフの物語。うち一人は、アドルフ・ヒトラー。「ヒトラーはユダヤ人の血が混じっていた」という証拠文書をめぐり、物語が繰り広げられます。ベルリンオリンピックからはじまり、歴史的事件をいくつか交えながら、最後は戦後のユダヤ、パレスチナ問題まで抉った壮大な作品。「戦争の本質とはなにか」という手塚先生が終生持ち続けた視点がもっとも反映されています。
2)『火の鳥』太陽編・復活編
「火の鳥」は、過去、未来の時間軸で織り込まれたいくつもの作品の集合体。
「生命」「永遠」「時間」「無常」といったテーマを扱っています。わたしが好きなのがこの2作品。
「太陽編」は白村江の戦いから壬申の乱に至る日本の古代争乱期と未来世界の「光」と「闇」の宗教対立が同時並行の物語として進みます。その二つの時空間と引き離された主人公たちが、最後つながるのですが、ここは映画の原作にもなりそうなほんとうに美しいシーン。
「復活編」は、瀕死の事故からよみがえった少年が、半分機械の体になりロボットしかその実在を見ることができず、しかも愛せなくなってしまったというストーリー。この設定がカフカのごとき実にシュールです。この少年の記憶回路が、「ロビタ」というお手伝い型のロボット誕生につながり、作品全体の狂言回しである「猿田」とともに「ロビタ」は「火の鳥」のいくつかの作品をつなぐ重要なキャラクターとして位置づけられることになります。
これも、未来と過去、そして各作品の伏線の張り方の妙、プロットとはこうつくるのかということを勉強した作品です。
3)『ルードウィヒ・B』
『ファウスト』と並んで絶筆となってしまった作品。ベートーヴェンの生涯を描いています。
とくに、ベートーヴェンの強烈な個性の描き方は秀逸。モーツアルトととの邂逅シーンは漫画の神様と呼ばれた手塚先生の温和な顔から想像できないほどの矜持を前面に押し出しています。この最晩年に描いたルイ(ベートーヴェン)こそ、手塚先生のもっとも内面に近い分身のように思います。
4)『奇子』
松本清張の『日本の黒い霧』と同じく、昭和史の暗部を描き出した作品。とくに戦後の農村の混乱と闇を手塚先生が表現しているのはほかに例がありません。手塚先生の描く女性のラインは清楚さとエロティックさを併せ持つことで有名ですが、「奇子」(あやこ)は後者を強調したキャラの代表でしょう。
5)『ブラック・ジャック』
やはりこれが、手塚先生の最高峰ではないでしょうか。200話以上ある中で、難手術挑戦やルーツ物、サプライズエンディングを強調した作品ももちろん好きなのですが、わたしはちょっとほろってくるような佳品に惹かれます。
がめつく、ことあるごとに金をせびるドケチおばあちゃんが、お金はすべて実はかつて息子を難病から救ってくれた医師(甚大先生)への手術代返還に充てていた『おばあちゃん』。
くも膜出血で倒れた社長を救った同じRHマイナス血液を持つ土木作業員。今度は彼が工事現場で倒れ輸血を必要としたとき、商談に向う飛行機の中で、かつて命を救ってもらった社長が、商談を放ってかれを助けにむかう『上と下』。
こういうのがいいですねえ。
そのほかにも『陽だまりの樹』や『鉄腕アトムー史上最大のロボットー』、最近映画化された『ブッダ』なんかも捨てがたいのですが・・。
またの機会に。