以前のブログでも取り上げましたが、
関東大震災で工場が全焼したある会社は、「債務」を最優先して金をかき集めて、取引先に支払しました。
そして従業員はいったん全解雇。断腸の思いだったでしょう。
でもお金や設備は失っても、「人」がいれば取り返せる・・。その後、あらためて「人」を集めて事業を復活させました。その事業に、かつて債務を優先してもらった幾多の企業が支援しました。
「取引先の信頼」「事業」とはこうつくるものなのだと思いを新たにしたエピソードです。
さて、東日本大震災でも東北の生産拠点が失われ、さまざまな製品の欠品が相次ぎました。
日用品メーカーもシャンプーやコンディショナーボトルの「ポンプ」部分の欠品が深刻になりました。
あの「ポンプ」の部分は、日本がもっとも安いコストで最高の品質をつくりだすそうです。
工業製品の多くが多くのアジア諸国で生産シフトが進む中、日本が世界で戦えている分野があることは嬉しいですね。
さて、生産拠点は少しずつ生産性を回復していきました。ですがさすがに一度に従前のような形で復活はできません。
ここでどれだけいち早くメーカー各社も「ポンプ」を確保できたか、これが普段の取引先との信頼関係によって左右され、ビジネスに大きく影響しています。
当然、「ポンプ」が揃わねば最終製品ができません。欠品を引き起こしてしまうのです。
生鮮を扱うドラッグストアやホームセンターも、「取引先(生産者)の信頼」をどうつくるかに心を砕いています。
地域の生産者はJAさんや漁協などの主要取引がありますし、直接取引をするにしても、食品ベンダー各社、または大手スーパー、地域の食品スーパーさんがやはりメイン取引になります。
ドラッグストア、ホームセンターで「生鮮」を扱わせてくれと急に言っても、生産者の皆さんは??ですよね。
あるドラッグストアさんは、2年がかりで、地域の生産者の皆さんをまわり、最初は、JAはじめ主要流通からはずれた商品を扱わせてもらうだけにすぎませんでした。
ところがバイヤーが生産者さんの作業を手伝い、値付けを生産者さんに任せ、支払いをキャッシュで月2回おこなう・・。生産者さんの手元には、これまでの取引先よりも高い割合で現金が残ります。
さらにいえば、畑のそばから、店頭まで商品を並べるまで、どれだけ合理的に物流を設計できるか。これを提案します。店頭在庫について、生産者さんは畑にいながら在庫状況を知ることができるのです。そうすれば生産者さんは安心して自分の本来の仕事(食物を育てること)に取り組めます。
そのような地道な信頼関係を築いて、ドラッグストアやホームセンターで生鮮が置けるようになるのです。
現在は「道の駅」方式で、地域の生産者の皆さんに「場所貸し」という方法がほとんどですが、食品スーパー以外の企業が「生鮮」を本格的な自社カテゴリーとして育てるのであれば、地域生産者との地道な信頼関係をつくることは不可欠です。
近年は、農業にもすぐれた取り組みが行われており、新しい農法や商品作りに挑戦し、従来流通ルートではない方法をつかっている生産者さんもいらっしゃいます。
いまはネット直販や飲食店との取り組みがほとんどですが、生産者の皆さんを育てていくという意味でも、ドラッグストアやホームセンターがこれらの生産者と信頼関係をつなげていくことは十分可能ではないかと思います。
とくにドラッグストアは「健康」を提案する業態です。健康生活のための「おいしくて栄養の高い地域生産物」を提供していくことは今後のビジネスとしては面白いでしょう。
ただドラッグストアの場合は、「生鮮」の商品特性を理解しなければ、キラーアイテム導入も「絵に描いた餅」です。「生鮮」は返品がききませんし、バイヤーは地道な生産者との関係をつくることが必要です。
あとは「志」が大事ですよね!