この3月の小売業の月次報告がでています。

食品スーパーやホームセンターは軒並み2ケタ増。

コンビニ、ドラッグストアも2ケタ増が多い。


震災前までは、「既存店活性化」がかれらの大きなテーマでした。

だからいろんな改善活動(勉強)をしていました。

厳しい不況期にも伸びている企業は、小さな改善の積み重ねがありました。


ここにきてまさに「特需」です。


しかも「値引きしなくてもいつもより多めに買ってもらった」と考えなく喜んでいたある食品スーパーの幹部がいたそうですが、


わたしは誤解を恐れずにいえば、


「それはあなたの店舗の力(信頼)ではない」と言ってしまいます。


お客様がお店や商品、サービス、スタッフを信頼していたら、普段から値引きしなくても売れます。


いみじくも「買いだめ」現象を称して渥美六雄氏は、「店舗の信頼のなさの裏返し」と看破しています。


次にいつ商品がくるかわからないから、信頼していないから「買いだめ」するのです。



月刊MD編集長(2代目)のブログ


きのう、お世話になっているリゾームの中山社長様の主催するセミナーに参加してきました。


中山社長の会社は全国の有力なショッピングセンター(SC)で使われている顧客管理とテナント教育プログラムサービスの企業です。


セミナーテーマは、「震災 緊急未来対策ミーティング」。


デベロッパーさんはじめ、多くのテナント企業の方々がこの勉強会に参加しました。


勉強会に先立ち、2つの立場から基調講演がありました。


おひとりは、観光産業の立場から、JTBの清水愼一常務。


観光業界もこれまで、テロやサーズといった異常事態に対しては経験値があり、対策を備えていたといいますが、今回の震災はこれまでの経験は役に立たないということを強調されていました。


この3-4月、自粛ムード経済の中で、

観光庁の調査宿泊キャンセルは約56万人。

JTB内でも、前年同期比は国内外旅行は30-35%減。

訪日観光は、4-6月で65%減です。


ただひとつ例外があります。GWの欧州に行く高齢者の旅行はほぼノーキャンセル。

かえってプラスだそうです。


彼らはすでに10年連続というリピーターたちであり、1度の旅行でひとり50万円を使います。


みっつ見方があります。


1)日本の金融資産の7割を持つと言われる60歳以上の方々を経済復興のためにどう気持ちよく消費してもらうのか


2)どんな逆境でも、信頼を築いている「リピーター」さんは離れない


3)逆境だからこそ、旅の持つコミュニティ要素(つながり、共感、学び、健康など)が生きる


ということです。


これは小売サービス業の今後の重要テーマだと思います。


JTBさんは救助から救援へフェーズが移行したとき、ホテル旅館の空き部屋提供、バスなど移動手段の手配を後方支援としてスキーム作りを政府に交渉提案。東北6県の知事の支持のもと、スムーズにこれを進めました。


マスメディアではあまり取り上げませんが、避難所から避難所に向うバスなどはやはりこういうバックシステムがあったからなんですね。


このスキームは政府や自治体が一部補助しますが、実費の部分はJTBさんもホテル旅館もバス会社もほぼ原価割れでサービスを提供しています。


いま観光客が激減する中で、観光業界の使命感をいまさらながら感じます。


清水常務は、震災の大きな変化をとらえて、


「いままで緩慢だった変化が一気に進む」と言います。


JTBさんも、


団体から個人・グループへ、

ビギナーからリピーターへ

観光施設から街歩きへ

そして、ビジネスモデルも、

コミッションビジネスからソリューションビジネスへ


この間の変化に対応してきました。


観光協会主導ではなく、地域に深く根差した生活コミュニティとの関係づくりが大切だと言います。


そのうえで、


「観光と小売はセット」という提言をされています。これは貴重な示唆です。


もうひとつの講演は、RBKの飯嶋薫代表。

「三愛」の社長などを歴任されたファッションビジネス界の重鎮です。

わたしも前職時代、貴重なお話をいろいろ伺いました。


被災地のショッピングセンター(SC)も営業不能に追い込まれた場所が多数あります。

ワールドさんも300店舗が被災し、補修に膨大な金額がかかるといいます。


また西の新規SCもテナントが埋まりません。


アパレル業界は、ユニクロに代表される海外生産組が好調でしたが、逆張りで、日本の技術を利用しようということで、多くの有力なアパレル企業が、「日本回帰」をはじめていました。


ところが、ニットなどは福島はじめ東北に優秀な工場があり、それらも被害を受けてしまったそうです。


しかしその中でも、


ルミネさんは、4月には106%

テナントによっては二けた増を達成しています。


あるアパレル企業は、自粛ムードの中、3月の最終週には前年比20-30%増だったそうです。


このトップは、「自分たちの仕事をしよう」と激励し、計画停電下でも、お得意さんに電話をかけ、帰りの足もままならない中、メールマガジンも出し続けました。


13000通のメルマガの中で、ひとりだけ「複雑な心境」というお客様がいたそうです。ですが、自分たちの思いを伝えてそのお客様も来店したそうです。


3月後半はとくにみなさん「不安」でした。


いつも買っている店舗の聞きなれたスタッフさんからの電話はとても温かなものだったのでしょう。


ここでは、「いまスプリングセールをやっています!」とは言いません。


「こんな状況ですから、なにかお困りのことはないですか?」という販売員さんたちの「人間」としてのコミュニケーションがベースでした。


テレビを見るしかない、どこにも出かけらないという状況下でお客様は安心し、勇気づけられたのではないでしょうか?


観光とファッションビジネスはたしかに逆風が吹いています。


ですが、その中で次につながる取り組みを行っています。


飯嶋さんは、このアパレル企業のトップがつかった「疾風に勁草を知る」という言葉を紹介されました。


強い風が吹き向ってくる中でこそ、風に負けない強い草(勁草)が見分けられるという意味です。


被災地外の買いだめ特需、コモディティ優越特需に浮かれている場合ではありません。


「勁草」の店舗、人材を見出した企業、産業が次のビジネスを引っ張ると思います。


この2つのお話のサマリーは月刊MD6月号でご紹介します。


ドラッグストアビジネスに携わるすべての人に読んでいただきたい内容です。