前回、「ゴルゴ13」のマイベストを書いたのですが、
いまの原発の苦闘は「2万5千年の荒野」に通じます。もう20年前ちかくになる作品ですが、
問題提起ほか、まったくその価値を失っていません。
それにしても、あまり政治のことは言いたくないのですが、
国家的問題にあって、いまだ経産省の一委員会、東電という「通常組織」が非常事態にあたっています。
「通常組織」は「非常事態対応組織」ではありません・・。
これは現場への批判ではありません。
かつて日本の帝国陸海軍は、戦時という究極の非常時にあっても通常人事を繰り返しました。
ゆえに危機対応の適材適所がかなわなかったという検証があります。
歴史の判断は現在から行う場合、唯物史観にならぬようとは思いますが、わたしは一理あると思っています。
さて、マイベスト。
ブログでもたびたび触れている「サンクチュアリ」名言集です。
日本人の「自立」をテーマにカンボジア内戦を生き抜いた二人の男が、政治と極道、光と影のトップを目指すストーリーです。
いやあ学生のころから連載を読んでいたのですが、熱くなりましたねえ。いまでも時々、壁にぶちあたると、本棚から引っ張り出したりして・・。わたしも「形」からはいるタイプです(笑)。
今回もどれが一番ではなく、5つでベストです。
1)「普通の人間が30年かかるところを1日でやれるからですよ」(1巻)
北条が極道を目指した理由。金融バブル時代、一夜で巨万の富を稼ぐ若い経営者にちょっとだけ期待したけど、ダメでしたねえ。
なんのバックボーンもない若い政治家が走るためには、30年の道のりを1日でクリアする力(金、暴力)が必要でした。
シンプルでわかりやすい。
高杉晋作はじめ幕末の志士を支えた下関の商人白石正一郎など、志を支える商人の必要性を痛感する言葉。
極道じゃほんとはだめですけどね(笑)。
2)「オレがやろうとしているのは、いまの繁栄ではない。日本の、日本人の未来なんだ。保護されすぎた人間と国に未来はない」(3巻)
浅見が政治を目指した目的。これ以降、「自立」という言葉がキーワードになる。
連載はちょうどバブル経済の破たんが見えたころ。日本社会はある意味浮かれていた。
個人的にも、少し先に社会に出た新卒の先輩たちが、高級レストラン接待、海外旅行招待・・。
なにかおかしいと感じていました。
「失われた20年」を経て「復興経済」に舵をとらなければならないこの季節に、もう一度考えたい言葉。
3)「極東のちっぽけな国が経済という力で膨れ上がった。いつの日にか、世界中からターゲット(敵)にされる日が来る。平和ボケした今の日本にその抵抗力はない。裏の世界とて同じこと。いまの日本なら一気に攻め込める」(3巻)
日本の外交問題、経済、軍事、産業政策を見るにつけ、連載から15年以上たっても、この言葉の重みを感じます・・。
4)「あんたたち団塊の世代がナマクラだったからいまの政治(システム)ができあがっちまったんだよ」(4巻)
エレベータの順番を待っているような政治家に向けて浅見が放った一言。
党利党略最優先で、「個」の政治家のリーダーシップ不在が日本の閉塞感の元凶。
これは現在にも通じる。政治にリーダーがいない。
この後、浅見は北条とのつながりを暴露されるが、二人は暴露した政府与党の最大権力者に媚びることは一切なかった。それが「生きる」ということ。同作品の主要メッセージのひとつ。
5)「神戸は奪(と)れても、伊吹は奪れねえ。奪っちゃいけねえ人間なんだ」(9巻)
神戸山王会という最大組織を相手に北条が放った一言。組織ではなく人。
山王会4代目の伊吹は「10年先をみる」人間であった。
この先、極道界の再編、表社会進出への布石、そして華僑ならぬ「和僑」の発想につながる。
この思想もいまもってまったく価値を失っていない。
もちろん「オデッセイ」も「ヒート」も大好きですけど、これが原点かなあ。
再びの「サンクチュアリ」。
いろいろと考えさせられます・・。