米国の西海岸にあるバリューディスカウントチェーンの「トレーダージョーズ」は、
日本人観光客にいまでも大人気ですね。
よく、ショッピングバッグのお土産をいただきました。
デザインもユニークなので、ついとっておいてしまうのですが、気づけば我が家にも10種類以上眠っています。
バリューディスカウントと言われるゆえんは、
「安くて価値が高いもの」を提供しているからです。
有名な「チャールズ・ショ―」と言われるハウスワインブランドは1ドル99セント。
カリフォルニアの優れたワイナリーで生産されています。
これはパン売場です。
トレーダージョーズはPOPがありません。
プライスカード、エンドのパネル、壁面のサインに手書きのイラストがついている形式です。
手書きの味を残しつつ、作業を合理化している例です。
手書きイラストはデザイン学校やアート系の学校を出たスタッフが書いており、店舗によって異なります。
そういうところで店舗独自のアイデンティティを出しています。
よく日本のチェーンで揶揄されるような「金太郎飴」的な店舗にならないのはこういう工夫があるからなんですね。
パンの売場も、
以前、コストコを書いたときに触れましたが、
朝食やサンドイッチのバラエティを出すことが、MDの基本です。
ですが、増やすのはパンの種類。
パンにのせるスプレッドやサンドイッチに挟む具材のバラエティは絞っています。
朝忙しいママは、朝食のマンネリ化を嫌います。
いつも同じパンとスプレッドが続けば、家族も手を抜いていると思われます・・よね?
だからスプレッドは同じでもパンを変える。
マフィン、ベーグル、黒麦パン、クロワッサンなどなど。休日はフレンチトーストにしてしまえばいい(笑)。
この手を抜いていないように見えて、抜くことができる(笑)バリエーション戦法が
トレーダージョーズやコストコの方法なんですね。
ちょっと見えにくいですが、真中にカウボーイのおじさんのイラストがあります。
POPがないなんて日本の店舗ではあまり考えられませんが、
POPに頼らずに、店舗やスタッフの個性を出せる方法もあるんですねえ。
その意味では、やはり米国チェーンは奥が深い・・。
店舗にいくと、コーヒーサーバーがあるんですが、
新しく入れた豆だとかで、試飲してくれないか?とスタッフからコーヒーをもらいました。
飲み終わって、「この酸味は好きだなあ」と伝えると、彼はとても嬉しそうでした。
こういう店舗でのコミュニケーションってお客も嬉しいですよね。
さて、月刊MDで連載していただいているロス在住の鈴木敏仁さんは、
以前、トレーダージョーズのMDコンセプトをご紹介くださいました。
「Well educated under-paid」
直訳すれば、「教育は十分受けているが、所得が少ない」。
意訳すると、「こだわりはあるが予算がない」。
うーん実にわかりやすいですね。
ライフスタイルにこだわりはあるんだけど、家や車のローンも残っているし、子供の教育費もこれから益々かかる。すべてに予算を割り振ることができない。
かといって、モノやサービス享受については大事にしたいスタイルもある・・。
そんな顧客層に支持されているのが、トレーダージョーズなんですね。
もうひとつ、同店舗のMDの核を成すコンセプトが、
「Outstanding value」=「突出した価値」。
先ほどの200円しない美味しいハウスワインなどが代表でしょう。
単なる安売りではない、バリューディスカウント。
早稲田の守口先生の言葉をつかえば、
「実用的価値と情緒的価値のそれぞれ最高点を目指す」。
日本のスーパーでもオーケーさんなんかは目指していますよね。
オーケーさんの用賀店の駐車場は半分以上ドイツ車ですよ(笑)。
しかも、プレミアムモルツを日本一売っています。
でも食品ディスカウント企業として知られています。
まあこれは、消費者にとってはなに企業とかは関係ないんでしょうけど。
ちなみにオーケーさんの刺身は美味しい。しかも安くてボリュームがある。
これは、細胞を壊さないで冷凍解凍する「CASシステム」を店舗に導入しているんです。
一台4000万円くらいするとか。
どこにお金をかけるのかわかっているスーパーさんですよね。