セブンイレブンがNTT、URと組んで、都市部の古い公団に住む「買物弱者」のためのサポート実験を開始するニュースがありました。素晴らしい取り組みですね。
地方の過疎地域に限らず都市部でも買物弱者が大勢発生しています。経産省によれば約600万人・・。横浜市ふたつ分の規模です。
以前ブログで紹介した愛知県半田市のイシハラフードさんのようなユニークな「御用聞き」など、地域に根差す店舗同士が連携してお年寄りの皆さんの生活をサポートしていくことがいま重要だと思います。
わたしが小売業って素晴らしいなあと思うのは、こういうことに対して助成金や補助金(税金)を頼らないこと。知恵と工夫でビジネスモデルを組む。商人は独立してこそ「本商人」なのです。
政治的に話題になった鹿児島の阿久根に、マスコミでもずいぶん取り上げられた「AZスーパーセンター」さんがあります。
過疎が進む中、買物に難儀している人たちのために、10年以上前から、自分たちで巡回バスを走らせました。
その後、市の助成が出たみたいな話もききましたが、私が10年くらい前にはじめて牧尾社長にお目にかかったときは、自力で走らせていました。
すっかり有名になった鹿児島のAZさん。現在3店舗。
月刊MDでも2年ほど前に、インタビュー記事が掲載されました。
車から、
神棚、仏壇まで。神仏習合です(笑)。
品揃えのすごさだけがテレビでは強調されましたが、
牧尾さんの本当の意図はそこにはありません。
そもそもなぜこんな店舗が出来上がったかと言えば、牧尾さんが以前の店舗をやっていたときに、取引していた卸さんがばたばた潰れそうになったからです。あるナショナルチェーンが南九州に進出してきましたが、破綻してしまい、卸さんもそのあおりを食ったわけです。
そこで、つぶれるならうちで全部引き取る、そうやっていろいろな取引先を合わせたら、こんなユニークな店舗ができあがったわけです。
市内でやっていたパン屋さんも閉店せざるえなくなった、だったらうちでやればいい。
食品も「地産地消」が原則です。AZさんの紅茶のストアブランドはとても美味しく、紅茶にうるさい友人も絶賛していました(本場ですもんね)。
24時間営業やっているということでも有名です。わたしは以前、ここで24時間ウォッチングの仕事をしました(笑)。
AZの店舗は自家発電。しかも夜は九電から安く買っています。
10年前に、すでに電気自動車もやりたいと言っていましたから、すごい先見の明ですよね。
農業、漁業などに従事している人たちは朝もはやく、飲食業の人たちも夜自分のお店を閉めた後、看護士さんも夜勤明けに買物します。
かつてコンビニがエコじゃないとか、パーソナル需要(食事の個別化)を促進したなど名指し批判されましたけど、ナンセンスですね。
深夜や正月に店など開けなくてもいいじゃないか、むかしの「三丁目の夕日」のような団らんがある時代に戻ろう・・みたいなことが言われました。でもそれって深夜や正月にも働く人皆さんへの冒涜ですよね。
買物に行けないようなところに住んでいるのが悪いという人はいないでしょうが、
買いだめすればいい、宅配を利用しようっていう意見もありますが、地域に根差す店舗はたんに利便性だけで存在するわけではありません。
AZさんはお年寄りの皆さんの憩いの場所でもあるのです。
セブンイレブンなどの取り組みもただ届けるのではなくて、豊かなコミュニケーションをつくりだす事業として考えてほしいですね。