ようやく本日レギュラーの月刊MD3月号原稿が終わりました・・。
息をつく間もなく、合間合間に単行本づくりを進めています。
本日は、夕方から早稲田大学へ。
あるマーケティング研究会へ参加しました。
研究会の基調講演は北九州のサンキュードラッグ平野健二社長。実は現在平野社長の単行本をつくっておりまして。書下ろしで「次世代ドラッグストアづくり」をテーマにしたものです。その打ち合わせ兼ねてお供させていただきました。
研究会のイントロは商学学術院教授の守口剛先生。
ディスカウントストアにおける「実用的価値」と「情緒的価値」の両立を消費者視点で捉えた論は、メーカー視点の「付加価値至上主義」とは一線を画しており、さすがです。
で、こちらが平野社長。北九州下関ドミナントを図った60店舗約180億円の企業を率いるトップです。
上場ドラッグストア企業の大手は軒並み2000億円から5000億円の売上です。でも北九州の片田舎(失礼)で大手に比較すれば10分の1程度しかない企業に大手の製薬、化粧品、日用品メーカーが注目しています。
サンキューさんが主宰する研究会(北九州で毎月開催)にブランドのチーフマネジャークラスを派遣するところも多い。それどころか、ユニ・チャームの高原社長(この方も素晴らしいトップ)はじめ大手のトップも講演を聴きにきます。
なぜか?
いまつくっている単行本の宣伝を兼ねまして(笑)、サンキューさんのシリーズをちょっとやっていきましょう。
北九州は政令指定都市の中でもっとも高齢化率が高く、サンキューさんの商圏設定は半径500メートル以内に住んでいる消費者が繰り返し来店してもらわなければ成立しないビジネスです。
そういう条件下で、サンキューさんの店舗は半径500メートルに住んでいる人の購買が総売上の7割。1店舗平均5億円の売上ですが、客数は対前年比105.4%になっています。
ちかくにはこれも以前取り上げた宇野社長率いるディスカウント業態コスモス薬品さんも進出してきています。進出当初は、さすがにサンキューさんの近接店舗の売上が落ちましたが、すぐに回復したそうです。
ポイントはリピーターづくりです。
コスモスさんは常時冷凍食品半額です。これはこれでお客様がきます。
ほかの中途半端な企業は、コスモスさんに対抗して無理やり(仕組みがないのに)ボトムプライスを合わせたり、チラシがはいったときだけ半額にします。でもチラシのときだけなので、お客様はそこだけ狙っていきます。
サンキューさんも冷凍食品はありますが、上のふたつの価格の安さにはおよびません。
ではサンキューさんはなにで人を集めるのか。
サンキューさんは、小麦と卵をつかわないおいしいパンを発掘して展開しました。
これはアトピーで悩む人たちが毎日食べられる商品です。
アトピーの人のパンなんて、冷凍食品に比べたら、1日の販売数量なんてたかが知れています。
ですが、サンキューさんはそう考えていません。Dg.Sですから、アトピーに悩む人たちはスキンケア商品、化粧品、入浴剤など様々な商品を一緒に買ってくれるのです。サンキューさんは「商品」ベースではなく、「人」ベースでマーチャンダイジングを組み立てています。
日本の小売業でCRMはかなり以前から導入されてきました、ネット通販など一部を除いて、規模ではなく質でサンキューさんのレベルで使いこなしている企業は少ないと思います。
「目的来店が明確なターゲットが繰り返し買う商品」をキーとし、ほか商品に派生させる・・。これがサンキュー流のリピーターづくりです。
一番大変なのは、チラシで毎回目玉で冷凍食品5割引きと打ち出す企業でしょうね。毎回コストもかかるうえに、チェリーピッカー(目玉商品目的)しか来ないのですから・・。チラシが入ると客数は増えますが、店頭補充頻度増加、売場づくりでコストも増大。結果ROIも低くなります。
平野社長とサンキューさんの引き出しはたくさんありますので、また次回に。