私の古巣を創始した倉本長治先生という人は、「日本の戦後商業の父」と全国の商人から慕われた人でした。

もちろんわたしはお会いしたことはありませんが、前職時代、いろいろかべにぶつかったとき、会社の屋上にあった書庫から、全集を引っ張り出してきて読んだ記憶があります。そのたびに目から鱗がおちたものです。


きのう、柳井さんのことを書いて、自宅にある「成功は一日で捨てされ」をぱらぱらめくっていましたら、


「店はお客のためにある。従業(店)員とともに栄える。そして店主とともに滅びる」とあります。


この前段が、長治先生の言葉。有名な「商売十訓」の第一にあります。顧客満足(CS)と従業員満足(ES)は同時に実現してこそ、商業と文化が発展するということを一言で表現した名言です。


10年前くらいのインタビューで、上司についていったとき、メモ魔の柳井さんが書きつけた言葉と記憶しています。


そして後段「店主とともに滅びる」が、柳井さんのオリジナルだと思います。

すぐれた経営者は、よい言葉を自分流に加工して自分のものにしていますね。


わたしの好きな長治先生の言葉に、


「不況知らずは正しくない」というのがあります。


「不況知らずという言葉は正しくない。不況を知りぬいた本物の商人こそ、好況と大差なくこれを迎えることができる」


商売を、不況のせいにして嘆いている商人、不況のさなか安売りで儲けている商人を見て嫉妬している商人を戒めたエスプリのきいた名言だなあと思います。


さらに続けて「不況は本物の商人を鍛え、育てる」とも言っています。


こういうときだからこそ、勉強して、不況だろうが、好況だろうが関係ない、ぶれない「自分の商売」を確立せよと言っているのだと思います。


柳井さんも、言い訳しない商人ですね。


天気のせいにしない、


営業日数のせいにしない、


政府の経済対策のせいにしない、


エコポイントも補助金もあてにしない、


そして、不況のせいにしない。


客数減も売上減も、すべて自分の責任で考える。


わたしはやはり本物の商人だと思っています。