全国にはいくつもの素晴らしいスーパーさんがありますね。
おはぎを日本一売るお店でマスコミでも話題になった「さいち」さんや、毎日が縁日のような高知の「サンシャイン」さん、日本一視察が多いという北九州の「ハロデイ」さん、野菜が素晴らしく安くて美味しい草津の「ハズイ」さん、あとはわが故郷防府の「丸久」さんなどなど。まだまだ知らないお店はたくさんあります。時間の許すかぎり、探したいです。
でも、うちの近所にあってほしいなあと思うスーパーをひとつだけ挙げてと言われれば、わたしは愛知県の半田市にある「イシハラフード」さんです。
業界の人たちがどかっと視察に訪問するようなお店ではないのですが、なぜかほっとするんです。お店にいるとこのまま近所の自宅に帰れるような・・そんな気持ちになります。こういうお店は少ないです。
もちろん、品揃えは約400の取引先を開発して、「お客様の健康的で楽しい食生活をサポート」というポリシーに徹しています。これは静岡の自然食品組合さんの商品を集めたもの。なかなか食品スーパーには卸してくれない組合さんだったのですが、イシハラさんの店舗を見て、ぜひ置かせてほしいと言われたそうです。
石鹸、洗剤も、自然素材をものを揃えています。
平和堂さんという彦根に本社があるスーパーさんは、琵琶湖汚染を防ぐために、環境に配慮した石鹸をメーカーと一緒に開発して、ストアブランドとして地元に浸透させました。琵琶湖を愛する地域住民と小売業の役割が結びついた素晴らしい例です。
もちろんイシハラさんもそういう思い。知多半島は半田、常滑など盛田さんはじめ酒蔵がたくさんある名水の宝庫。だから守りたいんですよね。ロハスだのオーガニックだの「流行り」で品揃えをしているわけではありません。商品を地域の皆さんと一緒に育てているのです。これも商品の育て方のひとつです。
お酢やみりんの種類も豊富です。
実は、さる大手メーカーさんの会長宅が、イシハラさんの近所にあるそうで、なぜかそのメーカーのもっとも売れているはずの商品がイシハラさんにないので、営業担当にきいたところ、
イシハラさんは「そのメーカーが料亭に出しているお酢なら置きたい」と営業担当は会長に報告したそうです。
大メーカーですから、ずいぶん生意気と思ったのかもしれません。ですが、さすがにこの会長も大物で、普及品のお酢が工業製品的な合成酢では健康によろしくないと思って、イシハラさんが置きたいと思う商品をつくれと言ったそうです。このエピソードを聞いたとき、二人の大物のすごさに思わず身震いしました。
惣菜も「家庭の味なんだけど家庭ではなかなかつくれない」がコンセプト。
古いお店だったとき2階の調理場で社長の奥様が惣菜をつくっては下の売場に持っておりて、お客様の反応を見ながら調整したそうです。3人の息子さんはそんなお母さんの姿を見て育ち、3人のお子さんはいずれもイシハラフードで働いています。しかもそれぞれ魚、肉、パンという基本生鮮の武者修行をして帰ってきました。
思わず笑ってしまうような「ケロちゃん」。子供に大人気です。
父の日のイベントでは、ネクタイ型のパンをつくって、来店した子供たちに、チョコや生クリームのトッピングで柄をデザイン仕上げをしてもらってお父さんに食べてもらいました。お父さんたちは嬉しかったでしょうね。
これもパンという「モノ」を売るのではなく「コト」を売っているんですよね。
子供が一人できて、自分のお小遣いで買える範囲のお菓子、パンづくりもイシハラの特徴です。以前、お金を落としてしまった子供がお店で困っていたら、知らないおじさんがお金を貸してくれたそうです。あとで母親がお金をお店に返しにいったところ、その知らないおじさんが石原社長さんで、びっくりしたとか。
近所にあったらいいなと思うスーパーは決して、よそが手に入らないような逸品をこだわって仕入れるスーパーではありません。それは百貨店さんで十分です。
毎日行くのが楽しくなる。買物をするとなぜか地域にも貢献する。お店を出た後に、なんだかほっこりする気分になれる・・そんなスーパーじゃないかなって思います。