「モノ」より「コト」とはよく言われますが、たとえばワインを売るのではなくて、ワインを飲むシーンを想定して売場をつくる・・。夫婦、恋人、おひとり様?記念日、デイリー?合わせる食材は?・・いろいろありますよね。
お米だって、美味しいお米を羽釜で炊きたい人もいれば、食べざかりの子がたくさんいて、いつも2杯のところを3杯食べてもいいよってお母さんが言える・・。こういうのって大事ですよね。私も高校生のころ3兄弟で、6合たいらげていました(笑)。母親も苦労しただろうなあ・・。
だから美味しいお米を安く売るのも「コト」なんです。
小売りの現場を見ていますと、いろんな商品の育て方があるなあって思います。
ディスカウント志向でもクオリティ志向の店舗でもそれぞれやり方があります。
たとえば、これは熊本のディスカウントストア、ロッキーさんのお米売場です。
もともと同企業は、生鮮品を扱っていなかったのですが、5年ほど前から産地直接納品方式(産地から直接店頭に並べてもらう)の生鮮を導入して、業績を伸ばし続けています。
当初は市場に出せない規格外商品を扱う程度だったのですが、ここのバイヤーさんは、市場より高い値入れによる現金取引で信頼を得て、さらに産地を訪ねて生産農家のお手伝いをして「どんなときにどんな商品を売ってほしいのか」「どうすれば店舗納品回数や入荷作業を減らせるのか」「朝収穫して最短で店舗に届ける方法は」・・など足で稼いで工夫することで店頭売価を安くしています。しかも鮮度は抜群です。
つまり生産農家も儲かって、お客様も喜ぶ。店舗も客数が増える。まさに「三方よし」です。
生産農家さんは、携帯電話で売場の売れ数を把握して、「そろそろナスを補充しなきゃ」という判断ができます。こういう小回りは大手スーパーさんにはなかなか難しい。だから鮮度が落ちる。しかも売れ残りは店舗が責任もって買い取ります。だから生産農家も安心します。
ちなみに、このお米ですが10キロ2100円です!!。3年前は2000円を割っていたそうです。しかも価格は特売ではなく、いつも同じ値段です。
これは地元ナンバーワンの単一ブランド米を生産しているメーカーさんと組んで、この企業が出すセカンドブランド(ブレンド米)をどう育てていくかということで考えた方法です。メーカーさんからすれば単一ブランドの値崩れも価値も落としたくないのですが、それだけではやっていけません。手ごろな価格の商品もしっかり売る必要があります。
周辺には、大手のスーパーもたくさんありますが、それぞれ既存の納品業者が決まっています。
それで地元でドミナントを築くロッキーさんと組んで、販売数量を増やしました。まさに「地産地消」ですね。
大手スーパーでは、生産者の顔写真入りで、「顔が見える」をうたい文句にして、だから「価格が高いのは当然」のような売り方をしているところもありますが、生産者も喜ぶ(儲かる)商品の育て方はひとつじゃありません。あまり知られていませんがディスカウントの方法もあるんですよね。
これはナショナルブランド(NB)メーカーさんと組んだ例です。
「アース」さんの商品がいいと思ったから、買い取ってしっかり数量を売りきる。
類似商品は置かないわけです。お客様もよほど他メーカーのものが気に入っているというのがなければ、まあ買ってみようかしらと思うかな・・。まあこれはさほどブランド信仰に縛られない商品カテゴリーでは有効な方法です。
東京のオーケーさんなんかもよく使う方法ですが、これもリテール、メーカー、ベンダー協働の商品の育て方のひとつですね。