月刊MDも昨年末、電子書籍化を本格始動しまして、年末年始休みの1週間ほどで、100件程度の無料版ダウンロードがありました。「富士山マガジン」サイトで展開中です。


さて、電子書籍無料版では、アジアのドラッグストア特集をアップしておりまして、紙版も併せて大変好評でした。

この特集の第一章タイトルは、「Who is Watsons?」(ワトソンって誰?)。*ブログタイトルはウルトラセブンぽくしました(笑)。もちろんホームズの相棒ではありません。


香港に本社がある世界最大級のドラッグストア企業です。アジアと欧州で約9000店舗。同社の親会社は香港一のお金持ちと言われる李嘉成氏のハチソンワンポアグループで、小売業部門ほか、不動産、通信、港湾コンテナ事業などを持つアジア有数のコングロマリットです。



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香港の中心部から車で1時間ちょっとのところにワトソンの本社があります。周辺は物流の倉庫街。この一画にあります。とても世界最大級のドラッグストア企業の本社に見えません。ウォルマートもそうですが、すぐれた小売業の本社は規模と反比例してとても小さいことがあります。



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この方は、ワトソンのマリーナさん。インターナショナルバイイングとオペレーションのトップです。ボートの選手で、アジア大会銅メダルのアスリートでもあります。才色兼備とはこういう人のことを言うんでしょうね。日本ではあまりお目にかかれないタイプの経営者です。


壁にかかっているのは、100年近くまえのワトソンのカレンダーポスターで香港市民の愛用品だったとか。ちなみに創業者のワトソン博士は、英国領時代に市民が気軽に買える薬局をつくった人です。


アジアのとくに華僑系の巨大企業の特徴は、経営ボードが安定していることだそうです。部長クラスは動きが大きいですが、トップボードは少なくとも10年は変わらない。「信頼」と「継続」に重きを置いている表れだそうです。あとは後継者を育てるということも。日本の企業はころころトップが代わりますからね。まあともに長所短所がありますが。



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九龍半島先端の繁華街「尖沙咀」にあるワトソンの店舗です。観光客も多いので、MDは「ハレ」向けになっています。百貨店ブランドを普段着で買えるというのがコンセプトです。



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ワトソンPBのシートパックは観光客のお土産としても人気。実は世界でもトップクラスのメーカーがつくっているスグレモノです。わたしもお土産に持って帰って、美容ライターさんが絶賛していました。



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日本ブランドはやはり高品質で人気です。昨年あたりから敏感肌用化粧品からトレンドはオーガニックに移りつつあるそうです。


ワトソンは、取引先と強力なパートナーシップを組んで、専用什器をつくります。ワトソンからすればオリジナル性が高まり、リテールブランド確立に貢献します。メーカーからすれば、店舗数が増える分、確実に商品が入り、販売数量が把握できます。販売数量のリアルタイムチェックはメーカーの生産、販売計画(原材料調達も含むサプライチェーン)に貢献し、メーカーの利益増につながります。


ちなみにアジア最大市場である中国への出店はこの1年で1000店舗体制になるとのこと。ドイツ人の現地トップが指揮をとっているそうです。さすがグローバル企業でさまざまな国籍の人たちが働いています。


ちなみにワトソンの親会社は不動産事業部も持っており、中国の大都市から中規模都市まで(人口と経済規模で1級から5級までランク付けがされている)情報を持っています。大都市の中心街の一等地を獲得しつつ、今後地方政府が開発を進めたいと考える中級都市まで出店します。この国策をにらんだ立地出店戦略の巧みさもワトソンの強さのひとつ。



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香港では50年以上の歴史があり市民の愛用薬となっている大塚製薬さんの「オロナイン軟膏」。日本の伝統薬はアジアでも人気です。


いま、日本のすぐれた技術を持つ中堅どころの製薬メーカーによる化粧品あるいはビューティ関連商品の開発がトレンドになっています。


アジアでは資生堂さんや花王さんなどメジャーブランドはもちろん人気ですが、たとえばDHCさんがワトソンと組んで、シンガポールやマレーシアで急速に市場を獲得しつつあります。ローカルメーカーがリテールと組んでともに成長していく例は世界中たくさんあります。


日本でも新潟県の小さなお菓子メーカーにすぎなかった亀田製菓さんやブルボンさんがチェーンと組んでいまでは全国どこのスーパー、コンビニでも置かれるブランド企業になりました。


米国のドラッグストアであるウォルグリーン、CVSケアマークの2大企業もとても勉強になりますが、アジアのワトソン、さらにはアジア各国の有力企業が続々育ってきており、新しいビジネススタイルにチャレンジしています。こういう動きにも目を向けたいですね。