1月号で取り上げた小林製薬さんの売場戦略は実にシンプル。
多くのメーカーが「シェルフシェア」(棚のシェア)のボリュームを取りに行くのに対して、「サイドネットシェア」(エンドサイド)を取りに行くというものです。
また同社は15秒CMの名手としても知られています。消費者がなにに困って、どんなソリューションがあるのか、15秒でシンプルにまとめあげています。だから印象に残りやすい。つまりマインドシェア(顧客認識のシェア)も高いわけですね。
ネーミングもすばらしいですね。肩こりの「コリホグス」、頭痛薬の「ズッキニン」・・。うーむ「ドラえもん」の秘密道具並みのわかりやすさです。
この「ナイシト―ル」のサイドネットも実にシンプルで計算されつくしています。同商品の昨年の売上は約47億円。同社の同じく肥満症薬「ビスラット」と合わせると64億円にも達しており、252億円市場と言われる肥満症薬市場をけん引しています。
ちなみにこのシンプルさは売場の作業も軽減します。サイドネットにぽんと貼り付けるだけです。補充頻度がやや高くなる可能性もありますが、売れ数を把握して需要予測すれば、店頭、あるいはセンターに在庫を持てばいいかわかります。
月刊MDの常連筆者の鈴木敏仁さんは、店頭販促物の多さでエキサイティングをつくる「足し算」の売場づくりから、今後はどれだけ省略することで購買意欲を高めることができるか、すなわち「引き算」の売場づくりが重要ではないかと指摘しています。
わたしもどちらかと言えば、後者にちかいです。無駄をそぎ落とすことによる「強さ」そして「深さ」。これってスポーツ、芸術・・いろんな例をみることができますね。
昨年6月にアメリカで鈴木さんにお会いしたとき、アップルのiPhoneの「引き算」の美学について面白いレクチャーを受けました。価値を付加するのではなく、余計なものをいかにそぎ落とすかに心血を注ぐ。だから組織もサプライチェーンもフラットになる。日本メーカーも続々とスマートフォンを登場させていますが、機能も種類も色も多すぎですね・・。
そんなことを考えながら、2月号の最後の原稿を書いていたのですが、今朝がたの吉田繁治先生のメルマガは、アップルの「グローバル・デマンド・ビジビリティ」をテーマとして取り上げておられました。こういうのを偶然の必然というんでしょうね。とても勉強になりました。