クリスマス&年末の買物状況は、「ほんとうに不況なの?」と言わんばかりの盛況ですね。

友人が住む、埼玉の三郷は、ららぽーとがコストコ&イケアを誘致した一大ショッピングセンターがありますが、

道も店もとても混雑しており、このシーズンは逆に地元の人間ははずすそうです。高速から近いですし、かなり広域から人を呼んでいるわけですね。


わたしはコストコの多摩境をオープン時から利用していますが、むかしは隣のカインズさんとともにぽつんとあったかんじですが、いまや商業集積ロードサイドですもんね。相変わらず混んでいます。



月刊MD編集長(2代目)のブログ

むかし、「Mart族」という言葉をつくった雑誌「Mart」の大給編集長は、コストコやイケアという海外チェーンを好んでつかう主婦層の購買行動を研究して、誌面づくりをおこなって大成功しました。なんといってもまだ日本にイケアが再上陸していない時期から、「イケアで見つけた食器と雑貨でホームランチ!」とかやっていましたからね。かなりハイブローです。そのあとでニトリストなんていうのも出てきました。


雑誌って専門誌でも一般誌でもやはり半歩先ぐらいを読んで、支持読者層を開拓するというのは鉄則ですね。最近はご一緒していませんが、大給編集長は、一昔前にはやって本格派の人口も確実に増えたビーズの仕掛け人でもあります。


この層は「駐妻」(駐在員の妻)と言われた人たちが中心で、夫の海外赴任で、数年間海外チェーンを利用してきた経験を持つ人たちの消費を取り出したもの。一昔前の丸の内ではたらくOLさんたちが、「紅茶」や「ワイン」「茶道」などを習って、花嫁修業じゃないですけど、ちょっと専門的な資格をとって、本格的に楽しむというのはどうも堅苦しい。幼稚園ママ同士、缶ビール片手で、1000円くらいのワインあけて、サンドイッチをつまみながら・・でいいじゃない、という消費です。横浜の港北地区や千葉の浦安地区にそういうカジュアルライフを楽しむ方々がいたんですね。


だからコストコやイケアもよくマーケティングしています。最初の関東の2店舗はこの地区がメーンターゲットでしたから。


ちなみに、コストコは、4000坪を超えるフロアにおよそ3500アイテムしか置いていません。セブンイレブンが30坪で2700アイテムですから、それより1000アイテム多い程度です。


ちょっと専門誌らしいことを言えば、コストコはまさしくチェーンストアが持つ「引き算の美学」の究極です。ドラッグストアはアイテムを絞ることを嫌う傾向があります。もちろんアイテムを増やしていく方法もお客様にとって魅力的な売場をつくる方法のひとつです。ですが、「引き算」でも魅力的な売場はつくれます。その典型例がコストコ。では、どこに魅力があるのか。


最初は、日本になかなか入ってこなかった液体洗剤などがヒットしました。学生時代に海外旅行を経験し、「ソニプラ」とかで買物をするのが好きな人達です。

また「大容量」という独自のパッケージ単位も珍しかった。複数世帯で分け合うという新しい楽しさが出てきました。


ですが、消費者の利用心理はもっと違うところにあります。たとえば毎朝朝食をつくるママからすれば、いつも同じパン、おかず、ドリンク・・マンネリになってしまいます。和食に切り替えるのも大変。そこで役に立つのが、コストコのヒット商品の大容量袋詰めロールパン。冷凍保存もきき、そのまま食べても、スプレッドをかえても、はさむ具材をかえてもバラエティが生まれます。さらにコストコはフランスパンやベーグル、ハンバーガーのバンズもあります。つまりベーシックなパンを大容量パッケージで朝食のバラエティをつくっているわけです。


だからママさん同士で、分け合うとさらにバリエーションが増えるわけで、ママさんたちにとっても「ラクでたのしい」わけです。


コストコの2000円前後のワインもおいしいですね。わたしがお世話になっている流通業界のさる名教授は、南アフリカのコストコのこのハウスワインをケース買いするそうです。こういう消費者をコストコはつかまえているわけですね。



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すくないアイテムでバラエティをつくり、ライフスタイルまで昇華させる。これが海外チェーンストアの強さでもあります。イケアも「引き算の美学」の究極例。イケアは世界各国に出店していますが、アイテムはすべて共通です。唯一のローカライズは、その国の公共住宅の間取りにあわせて、家具、インテリアを組み合わせ、配置すること。これもコストコのパンと一緒ですね。


イケアはさらに究極のセルフサービス。2階は、見て触って体験してもらい、1階で気に入ればパーツを買って自分で持って帰りつくるわけです。


日本では、最初このスタイルは浸透しないだろうと言われました。いまでも「組み立て家具」の売れ行きは予想を下回っています。また備品の不備や素材の悪さを嫌う人も多いですね。ですが、期間限定で「これでいい」という層もいるわけで、イケアやニトリを利用する層の重視ポイントはここなんですね。ちなみに「これでいい」の「で」のレベルを上げることが大切と説いたのは、無印良品のアートディレクターを務めた原研哉さんでした。


さて、一枚板の素晴らしいダイニングテーブルがほしいけども、買えない、つまり「こだわりはあるが予算がない」人向けのマーチャンダイジングがイケアやニトリのコアMDですが、イケアの組み立て家具にも横浜港北スタイルが登場し、ある分野では行列ができています。


それが「システムキッチン」。海外では、自分たちとイケアのスタッフであれこれ、シンクや天板などを我が家の間取りにあわせて決めていけますが、日本でそれができる人は少ないですね。そこで考えたのが、建築士と一緒に選ぶという方法です。建築士にマージンをはらっても、大手メーカーの同レベルキッチンに比べると、施工費入れて、30-60%安くなることがわかったのです。



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コストコもイケアもセルフ販売のオリジナルウェイ確立によって、とても低い「販管費率」と高い利益率を誇っています。しかも従業員満足度は極めて高く、しばしば米国のランキング調査でも上位に顔を出します。もちろん消費者の人気は、かれらの業績が物語っています。


日本のドラッグストアも「セルフ主義」「カウンセリング重視」「いやその折衷だ」・・といろいろ議論が出てきますが、些末な議論です。わが店がどんな顧客メリットをもたらす方法を作り出すか。その一点につきると思います。


月刊MD2月号の作業特集はそんな思いでつくっています。