朝日新聞デジタルニュースより
(就活面接の裏側)採用担当者「6月半ばから臨戦態勢」
企業の採用活用のスケジュールはどうなっているのか。経団連の採用選考に関する新しい指針では、3月から企業説明会が解禁され、実際の選考は8月から。しかし、とある上場企業の採用担当者はこう明かします。「6月半ばから臨戦態勢となる」。ホントの動きを教えてもらいました。
――これまでの採用活動の動きを教えてください。
「3月1日から広報期間が解禁され、会社説明会をスタートさせました。大きな会場で開かれる合同説明会や、大学に出かけての学内セミナー、そして自社で開催する説明会です。それらに加えて、今年の特徴は学生目線にたった研修形式のセミナーを開いてきたことです。さらに、女性限定のセミナーもおこないました。4月末までに一定程度の説明会を終え、5月から新しい形で学生と接点をつくっている段階です」
――3月以前のインターンシップはどうでしたか?
「昨年の秋から冬にかけて実施しました。会社を『体感』してもらう狙いで、さまざまな部門で業務体験をしてもらいました。参加した学生を優先して、セミナーや会社説明会にお誘いしました。これまでに、選考につながるようなアプローチはしていません。プレエントリーという位置づけです。弊社に興味のある学生の母体ができたところです。5月から正式にエントリーに入りました。すなわち、エントリーシートを提出してもらいます。もっとも、会社説明会に顔を出せなかった学生も受け付けます」
――5月からは何をしているのですか。
「それまでは人事スタッフが中心となって会社説明会をおこなってきましたが、その後は『社風』を知ってもらうという観点から座談会形式で学生に接触していきます。いろんな部署の若手社員を借り受けて、仕事の話だけでなくプライベートも含めて、学生に会社をよく知ってもらおうという狙いです。社員は一日中、缶詰め状態で同じような話を繰り返すのですが、学生には1日に何人かの話を聞いてもらいます。弊社の社風や社員をみてほしい。先着順で6月半ばまでおこなう予定です」
「景気が回復しつつあり、企業も採用数を増やしているので、今年は学生の『売り手市場』。さらに広報期間が3月から7月末までと長いので、多くの学生は幅広く企業を選んでいる最中。学生は、選考スケジュールは気にしていますが、切迫感は例年よりもないような印象を受けます」
――6月半ばからはどんな活動となりますか?
「ここからがミソ。他社の動きをみながら、どこで一歩を踏み出すかというところになってきます。社員1人に対して学生が3人とか5人とかいった相談会形式で、セミナーを開くことになる。もちろん、エントリーシートは読み込んだうえでです。ただし、経団連の指針などでは、この期間、『選考色』があるものは御法度です。他社の動きだしをにらみつつ、いつから選考に踏み切るのかどうか、そこが悩みどころです。ライバル企業はもちろん、大手の金融機関や総合商社の動きも気にかけないといけません」
「当面は選考色を出して学生を呼び込めないので、エントリーした学生全員を対象とした個別相談会をする予定です。選考にすぐに入れるように臨戦態勢になっているとも言えます。実際には、学生は若手、中堅、ベテランといった3人ていどの社員にあってもらいます」
「選考に踏み切っ後は、いいと思われる学生は人事面談に進んでもらいます。面談を数回受けてもらい、最後が内々定。7月以降は念のため、他社とのみあいで、いつでも面談への呼び出しができるように準備しておきます。今年から選考期間は短いので、出遅れは人員計画に致命的となりかねませんから」
――採用活動の後ろ倒しで、企業が困ることは?
「売り手市場の場合、内々定や内定の辞退者が例年よりも多くなる可能性があり、人員計画にも影響がでてきます。その穴埋めも考えると、採用活動の期間も長くなってしまう。採用期間が長引けば長引くほど、採用する学生の質が落ちてくる心配もあり、人材の質が希薄化するおそれがあるのです」
「これまでの採用活動は、転勤のある総合職コースは4月、地域限定職は5月と、職種ごとに時期をずらしておこなってきました。今年は採用期間が短期間であるため、すべて並行しておこなうしかありません。学生も我々も、厳しい日程になりそうです」
――各社とも採用数を増やす傾向があるようです。
「特に、女性の取り合いになりそうです。女性登用のながれもあり、各社とも営業力の強化や女性の活躍推進をかかげて、女性社員のすそ野を増やそうとしています。我々が女性限定で、きめ細かい研修形式でセミナーを開いたのも、優秀な女性に注目してもらいたいためです」
――大学別に採用の線引きはありますか?
「このクラスの大学はこのぐらい採用したいという腹づもりはあります。例えば100人採用するとしたら、このクラスの大学は、この割合にしたいというイメージは、目安として持っています。ただし、実際の選考では、出身大学は関係なく進めています。最終の局面で、大学に変な偏りがないかどうかを見極めて、調整することはあります。大学のランクで門前払いすることはありません。エントリーシートの中身のレベルが低いのであれば難しいということです。ただ、今年は採用数を増やすので、いままで採用していない大学からでも、面白い学生がいたら採用しようという話はしています」
――新しい採用活動の日程についてどうですか。
「企業にとっては、選考期間が6カ月から、2カ月に短縮され厳しくなりました。選考期間が長くとれた前回までのスケジュールの方がやりやすかった印象はあります。いまは過渡期で慣れないのもその要因でしょう」(海東英雄)