本年度の新入社員傾向 (SankeiBizから) | 人間力コミュニケーション基礎評論・講師 菅原藤理です。

「自動ブレーキ型」の新入社員 安心感はあるが…どこか馬力不足



ニュースカテゴリ:暮らし仕事・キャリア

2014.4.16 09:48更新

グループの社員らを集めた流通大手の入社式。消費税増税に伴い経営環境が厳しい中、「自動ブレーキ」で危険を回避しつつ、果敢な挑戦が望まれる=千葉市・幕張メッセの国際会議場ホール  今春も多くの企業で、新入社員が期待と不安で胸をいっぱいにしながら社会人としてのスタートを切った。日本生産性本部が発表した平成26年度の新入社員の特徴は自動車に例え、「何事も安全運転の自動ブレーキ型」。頭の回転は速いが、困難な壁にぶつかる前に未然に回避する傾向があることから名付けたといい、どんな環境でも的確に走行(業務遂行)できるような育成が求められそうだ。

 

 日本生産性本部は毎年、新入社員の特徴を企業の採用担当者や就労支援の専門家らで構成する「職業のあり方研究会」で議論し、物事に例えてまとめている。26年度入社組の特徴として、知識が豊富で情報収集能力にもたけ、就職活動も手堅く進めたが、そこそこの内定を得ると壁にぶつかる前に活動を終了した-と分析。何事も安全運転の傾向があり、採用企業側から「人を傷つけない安心感はあるが、どこか馬力不足」との声もあるとした。

 パワーを誇ったスポーツカーがもてはやされた時代から一転、近年主流のエコカーをほうふつさせるため、リスクを避ける安全運転もいいが、前向きに挑戦して失敗する中から学ぶ経験もしてほしい-と同本部は訴える。

 

 ちなみに25年度入社組の特徴は、部屋の隅々まで効率的に働くが、段差(プレッシャー)に弱く、たまに行方不明になったり裏返しになってもがいたりする「ロボット掃除機型」。ほかにも、直前まで心の「バー」が開かない「ETC(自動料金収受システム)型」(22年度)、環境問題に関心が強く節約志向で、小さくたたんだ状態から使うときには大きく広げる(育成する)必要がある「エコバッグ型」(21年度)、ネット上で他者に認知や共感を求めたがるが、他人の評価で萎縮しやすい「ブログ型」(18年)など近年は取り扱いに繊細さを求められるハイテク、デジタル製品の時代を反映したネーミングがみられる。

 「ロボット掃除機型」とされる新入社員らを迎えた企業の入社式でのトップのあいさつでも、厳しい経営環境の中、グローバル化を意識して奮起や挑戦を促す内容もあった半面、やけに“低姿勢”の発言も聞かれた。

 

 たとえば、2年連続で計9千億円以上の巨額赤字を計上し、経営再建中のシャープ。大阪市阿倍野区の本社で行った入社式では、昭和56年度以降で2番目に少ないという新入社員94人に向かって高橋興三社長が「厳しい状況にありながら(当社に)入ってくれることに心から感謝しています」と述べた。

 また、平成24年度に7500億円超の巨額の最終赤字を計上したパナソニックも大阪府門真市の本社で行った入社式で、津賀一宏社長が「こんな時期なのに(就職先に)選んでくれたことは大きな縁。大きなエネルギーを生み出しながら一緒に新しいパナソニックをつくっていきましょう」と呼びかけた。

 日本生産性本部では「自動ブレーキ型」への接し方として、「使う人がその特性を十分に考慮し、上手に活用して初めて真価を発揮する」と指摘。高感度センサー(先を読む能力)を生かした開発(指導、育成)をすることで、衝突回避だけでなく、さまざまな環境下でも的確に走行できるように導く必要性を説く。丁重に迎えた“金の卵”をいかに戦力として成長させるか、各社の力量が問われる。