ドンペリ玄関 @ 小説置き場 -4ページ目

ドンペリ玄関 @ 小説置き場

 グループブログ「ドンペリ玄関」です。
 基本的に、小説を書いていこうかと思ってます。



 金属の臭い。いつか嗅いだその臭いは、懐かしい。
 こんな危険な世界にいても、何故か、安心する。


 第五話


 スティーブを待っていたのは、紛れもない、先ほど彼を殺した『殺人鬼』だった。
「また来たのか」
 殺人鬼――アレックスが問う。
「俺も本当はこんな世界、去りたかったよ」
 でも、
「無理だから、闘うしかないだろ!」
 先手必勝。次の瞬間には、アレックスの懐へと、突っ込んでいくスティーブの姿があった。しかし――
「死ね」
 アレックスが手に持っているものを、掲げる。
 空間を斬る音。
「っ!」
 血の臭いが周囲へ充満する。
 アレックスの持っているものは、スティーブの額を掠めて、そこに在る。
「――!!」
 しかし、今回のスティーブはそれだけでは終わらなかった。
 スティーブの精一杯に伸ばした右手は、アレックスの顔面へとロックオンしていた。
 顎に強烈な一撃をくらい、アレックスの意識は一瞬飛ぶ。
「っお前!」
 アレックスも、己の愛剣を振り上げ、尋常じゃないスピードでスティーブの右手へと、槍のように突いていく。
 だが、それは当たらなかった。
 一歩後ろに下がったスティーブは、これまた尋常じゃないスピードで、土ブロックを二個、地面へと重ねたのだ。
「は、はは」
 勝てる。そう思った矢先、スティーブの後頭部に、激痛が走った。彼は倒れてしまう。
 目を目一杯、上にあげて、自分の頭があったところを見た。
 それは、鉄のシャベルだった。
「へっ……?」
 次に見るのは、自分が置いた土ブロックが、あるはずの箇所。
「ない……だって?」
 思わず、今の心境を漏らす。
 確かに二個の土ブロックを、地上に積み重ねたはずだ。しかし、そこには一つも土ブロックなど存在しなかった。
「エンチャント。一応、一通りのツールには付けている」
 初めて、マトモに目の前の人物が口を開いた。
「お前が置いたブロックなんて、エンチャントシャベルの前には役に立たない」
「……」
 スティーブは内心、格好つけて言ってるけどダサいな……、と思っていた。しかし、そのシャベルの強力さは確かなものだ。
 アレックスは、物を言うことなく、スティーブの下の草ブロックを、一瞬で掘った。
「えっ?」
 スティーブが気づいた時には、二メートル下へと埋まっていた。
 突然の事に、スティーブは驚きの表情を浮かべる。
「さァ、どうする?」
 上から見下すように見てくる殺人鬼。
 どうする……? どうすることも出来ない。
 このままでは、またあの暗闇に逆戻りだ。
 考えろ、考えろ!!
 考え終わる前に、頭部に痛みが走った。目の上の敵が、鉄剣で斬りつけたのだ。
 痛い。この状況を回避するチカラを持っていない自分が、辛い。
 おそらく、今から地面に土ブロックを置いても、すぐにシャベルの餌食になるだろう。
 他に頑丈なブロックは持っていない。仮に持っていたとしても、相手がピッケルを持ち合わせていたとするならば……、
 この状況は、不利な状況。
 この世界は、いくら死んでも生き返ってしまう世界。
 それなら、この不利な状況を、少しでも足掻いて、また再挑戦しようではないか。
 もう一度あの暗闇に行くことより、ここでひたすら斬られて終わることの方が、絶対に苦しい。
 じゃあ、どうするか。それは――
「……ぅうぉぉおおぉおおお!!」
 頭上に迫る鉄剣を避けようとすることなく(避けようとも避けれないのだが)、ひたすら素手で、奴の下を掘る。
 まずは相手が踏んでいる草ブロックの、一つを下の土ブロックを破壊した。バレないようにだ。
 そして、草ブロックを壊す。
 上にいた彼は落ちる。突然の事にも彼は別に動かない。
 そして――
「今までの分を、返す!」
 顔面へと一殴りした。
 敵の頬に、己の拳が当たる感触が、癖になりそうなくらいに気持ちがいい。
「もう一度!!」
 殴る。
 赤く点滅する敵。この世界の生物は、攻撃されると、生命危機と感じて、体が一瞬だけ赤くなるのだ。
 彼には攻撃が効いている、ということだ。
「もう一回ィ!!」
 三度目の攻撃をしようとした時だった。
「ッチ!」
 奴が、鉄剣が、動き出した。
 拳と剣がぶつかり合った。
 確実に、剣の方が強い。だが、拳の攻撃も弱くはない。
 太陽の真下で、双方の攻撃が煌めいた。
 どちらも譲らない。どちらかが死ぬまで――
「おおおおおおおおお!!!!」
「あああああああああ!!!!」
 スティーブの体力はもう後わずかだ。でも、それはアレックスも同じ。
 拳による連続攻撃が、何度も顔面に命中し、体がフラフラだ。
 つまり二×一メートルの狭いところで、奇声を発しながら殴り斬り合う二人は、なんともシュールだった。


 ○


 シュールな戦闘が終了したのは、わずか十秒後のことだった。
 アレックスは自分の脳内に浮かんでいる言葉が理解出来なかった。
 ――You died
(死んだ、のか……。ベッドで寝てないから、あそこから、か)
 そう。彼は死んだ。しかし、彼だけが死んだわけではない。

 頭に浮かぶのは、何度見たのか……。忘れるくらい見たYou diedの文字だった。
(相変わらず別の世界にはいけないんだな)
 殺人鬼と戦い、見事相打ちにすることが出来た。
(どーせあの恐ろしい奴も別の世界に行けないだろうから、このまますぐに生き返ると……鉢合わせ……)
 ちょっとの間死んでおこう、未来のことを考え、とりあえず一時間ほどYou diedの文字とにらめっこすることに決めたのだった。

 一時間後。
(よし、行くか)
 闇の大地へ、生き返った“二人”は――