
GHOST本部
宮下のケータイが鳴った
「あ、呼んでる」
幽が言った
「憑代人形か?」
希が訊いた
憑代人形とは
霊が生きた人間を監視するためにある監視カメラのような人形のことである
いろんな幽霊に好評の最新トレンドである
「そうなんすよ、まだ俺が宮下だった頃の先輩に付けたんです、まぁ大体の霊能力者が見る背後霊とかは憑代人形なんですけどね...それじゃあ用件聞いてきますわ」
そう言って幽は消えた
益子を気絶させたのは今井だった
益子の体に幽を取り憑かせるという大日のアイデアだった
そして益子が目を覚ました
中身は幽としての益子だ
幽は今井を見て飛び起きた
「今井先輩!俺っす!宮下っす」
今井は幽霊とかオカルトとかは信じないが
なぜかそれが宮下だと思えた
「それじゃ、私はお邪魔でしょうから」
そう言って大日は部屋を出ていった
一方そのころ
浅葉家門前に一人の男が入ってきた
「益子さんどこいるんだよ~確かホ村の浅葉家って言ってたからここでいいんだろうけど」
そう、財前である
「それにしてもこの村きっしょいなぁ、死骸に話しかけてる奴いたし...?」
財前は浅葉家の周りをうろつく老婆に気が付いた
だがこの村のことだ、きっとそれが普通なんだろうと合点し、浅葉家へと入っていった
世鶴達のいる祠では
ちょっとした問題が起きていた
「世鶴さん...人形見ませんでしたか?市松人形」
文殊は困ったように訊いてきた
「いや、みてないですけど...どうかしたんですか?」
「さ、サヨコです...サヨコの形代なんですよ市松人形ってのは...まさか...あ、いえなんでもないです」
明らかに何かを隠した
世鶴は察していた
「その市松人形がないって事は相当大変な事なんですね?」
サヨコは普通の御札では抑えきれず
市松人形を形代にしていた
荒らしに来た若者たちも市松人形には気づかなかったらしい
浅葉家の人間も夜な夜な市松人形が一人で動いているのを見たという事が数多くあるが
日が出ているうちは必ず祠に転がっている
それがないことに文殊は嫌な予感がした
「死後の世界ってほんとにあるんだな~」
「俺も最初の方は自分の名前が思い出せなかったんですよね」
今井と宮下は久しぶりの再会を一通り喜んだ後
雑談をしていた
「てか、今井先輩ってそんなに背高かったでしたっけ?」
「いや、お前が取り憑いてる人間が小さいだけだ、そいつも警察だよ、しかも警部補で柘榴鬼の事はよく知ってるみたいだ」
二人の部屋に
虛空と財前が入ってきた
「益子様にお会いしたいという人が...
「益子さん!探したんすよ!」
財前は相変わらずやかましい
「だ、誰」
宮下は思わず言ってしまった
仕方なく今井が財前に事情を話した
それほど驚いてはいなかった
その日の夜のこと
晩飯をご馳走になった世鶴、今井、益子の中の宮下、財前は借り部屋で雑魚寝していた
世鶴は夢を見ていた
しかし決していい物では無かった
世鶴はなにかから必死に逃げている
しかし何に追いかけられてるのかがわからない
夢なのに息切れし始めている
それと同時に後方から何かが姿を現した
市松人形だった
そして世鶴は息切れをし
その場に倒れ込んでしまった
世鶴の腹の上に市松人形が乗り
叫んだ
「ユルサナイ!」
世鶴はあまりの恐ろしさに目が覚めた
現実では腹の上に市松人形は乗っておらず安心した
汗がすごかったので風に当たろうと
世鶴は部屋を出ようと思った
部屋のふすまの明け
廊下に出た時廊下の奥から何かが迫ってくる気がした
そこで思い出した
世鶴が夢で走っていたのは
この廊下だった
暗闇から何かが近づいてくる
逃げようとしたが何故か足が動かない
暗闇から“それ”が姿を現した
世鶴は思わず声が出た
「狐…?」
野生の狐が入ってきたのだ
世鶴は一瞬気が緩んだが
その緩みは一瞬で飛びさった
狐が暗闇に引きずり込まれた
床には狐との物と思しき血しぶきが飛んだ
ふと気がつくと足元に
口の周りに血のついた市松人形が立っていた
世鶴が言葉を発する間もなく
市松人形は頭からまっぷたつに割れ
中から座敷童のような
和服の少女が這い出てきた
少女の肌は青白く、目は両目とも付いてない
これこそが形代から開放された
サヨコ本体である
サヨコは世鶴の腕をがっしり掴んだ
子供とは思えないような力だった
世鶴は必死に引き離そうとしたが
一向に離れない
そして段々と意識が遠のいていった
「おい…起きろ!起き~ろっ!」
世鶴は廊下で眠っていた所を今井と文殊に起こされた
朝になっている
どうやらひどい悪夢だったようだ
「サヨコが居た!」
世鶴の言葉に今井は首をかしげた
しかし文殊の顔は真剣になっていた
「世鶴さん…その話詳しく聞かせてください」
世鶴と今井はちょっと反応に困った
世鶴は文殊に浅葉家の裏山へと連れられた
裏山と言っても切り開かれた
広く平坦な土地だった
しかし普通と違うところがあった
そこには大きな8角形の線が書かれており
少し離れたところには
木製の砲台のような物があった
文殊が言った
「ここは干支封射留土と呼ばれています」
「ATフィールド?」
「エトフウイルドです!本来は浅葉家の人間以外に見せてはいけないんですが…世鶴さん…サヨコを見たんですよね?」
「ま、まぁ夢なのかわからないですけど」
世鶴は確証がないので曖昧に言った
一方
宮下と今井と財前は
浅葉家の庭にいた
「ここに成仏出来てない幽霊がいるってガチか」
今井の問いかけに対して
宮下は腕時計をかざしながら庭を隅々まで見ている
「妖怪ウォッチかよ!」
財前がツッコんだ
「一応お前より益子よりも先輩だぞ」
今井が財前に耳うちした
「御妖怪ウォッチでございますか!」
財前が訂正ツッコミを入れた
「あ、いた!老人だ」
そう言って宮下はその老人がいるであろうところまで走っていった
もちろん今井と財前には見えていない
宮下は老人とある程度話し
老人の経歴を知った
老人の名前は浅葉 勢至だった
サヨコに敗れ殺された当主だ
勢至が言うには
サヨコは本当に居る
封印できるのは干支封射留土と阿吽の台だけだ
屋敷の周辺に1人の女がいる
その女と私が取り憑ける人間がいれば
サヨコを封印できる
とのことだった
それを聞いて財前が思い出した
「あ、俺見ましたよ、この屋敷の門の前で様子を伺ってる婆さん」
今井はまだ信じる気になれなかった
その時世鶴と文殊が今井達の居る庭へと来た
世鶴の顔は真面目だった
「くっきー…私達が協力すればこの家の呪縛も解けるんだよ…ていうか解くにはわたし達も必要なんだよ」
「俺らが必要?一体どういう訳だ」
「干支封射留土は最低でも8人必要、阿吽の台は2人必要なの…で、干支封射留土は浅葉家じゃないと使えない、今ここにいるのは合計で10人」
「待て10人居ても浅葉家の人間は6人、あと二人たりない、どのみち俺たちが茶々を入れる場所じゃない」
今井と世鶴の会話に宮下が口を挟んだ
「待ってください…この屋敷の周辺に1人老婆が居るっていってましたよね…あとは勢至を誰かに憑依させれば頭数としては成り立ちます、あとは我々の中の二人がその阿吽の台っていうのを使い…そうすると1人余りますね…」
文殊が申し訳なさそうに言った
「じ…実は1人…おとりになってもらわないと封印が出来ないんです...ですがこの騒動は我が浅葉家の問題です、皆さまを巻き込むわけにはいきません」
「なら私がおとりになります」
そういったのは世鶴だった
「お、お前自分が何言ってるのかわかってるのか!?」
世鶴がそこまでする理由
それは自分の幼少期を思い出したからだ
遊び相手もいず、ただただ孤独だった
世鶴はなぜか過度なほど成仏させてやりたかった
「…わかった…なら俺はもう何も言わない」
今の今井が吐き出せた言葉はその程度だった
「そうだ、勢至を取り憑かせる代は…」
宮下はそう言いながら財前を見た
財前が気絶させられたのは一瞬だった
そして財前が目を覚ました時には
中身は完全に勢至になっていた
「あ…有り難うございます…若い体っていいなぁ」
勢至は一通り状況を理解したあと
老婆、と言っても実は勢至の妹を迎えに庭を去った
宮下も同行した
「不動(しずか)!」
勢至は老婆に向かって言った
不動は唖然としている
それもそのはず
中身は勢至でも見た目は財前だからだ
「信じられないと思うけど、勢至だよ、この体はちょっと借りた」
不動はなぜか勢至と確信を持てた
「サヨコが暴れてる」
「ああ、だから不動の力も必要なんだ」
不動はすべてを察し
頷いた
もうじき日が暮れる
作戦実行は今宵の12時
文殊は浅葉家の家族を裏山へと集めていた
世鶴や今井たちも集められた
サヨコもどこかで息を潜めていた