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ドンペリ玄関 @ 小説置き場

 グループブログ「ドンペリ玄関」です。
 基本的に、小説を書いていこうかと思ってます。


 第二話


 ここは、階段を下りた辺り、トイレ前及び玄関前だ。
 トントントン……トントントン……
 まだ、あの不気味な音が聞こえている。
「ハァ……ハァ……」
 普段はあまり怖がらない星和だったが、今は違った。
 恐怖が、どんどん近づいてきているような感覚に襲われる。だから息も荒くなっている。緊張とはまた別の、自分一人だけではどうにもならないモノが、星和をきつく包んでいく。
 そして気づく、いつの間にか、音がしなくなっていることに。
「?」
 先ほどまでトントンと何かを叩いている音がしていたはずなのに、今は、物音一つしない。するとするならば、それは星和の吐息くらいだろう。
 帰ろうかな、そう思うと、自然と体から力が抜けていった。しかし、
「え……」
 目の前を見ると、驚愕の光景がそこにはあった。
「キッチンに明かりがついてる?」
 なるべく小さくした声は、自分でも聞こえないほど小さかった。
 キッチンに明かりがついている、それだけのことで全身から血の気が引く。
 星和の母は、電気の消し忘れには相当厳しい。この間も、星和がトイレの明かりを消し忘れただけで、ものすごく怒られた。
 そんな母が、明かりを消し忘れるということは、この瞬間に世界が終わるくらいありえないことだ。
 だが、そのありえないことは、目の前で現に起こっている。
「消し忘れているだけならいいけどな……」
 頭の中は消し忘れ、という結論に至っていた。しかし、現実は違う。
 トントントン、トントントン
「ッ!?」
 また、あの音だ。それも、キッチンの方から聞こえてくる。
 自然と受け身の体勢にはいるが、そんなものは意味がない。何処からかわき上がってくる、この恐怖はどうにもできないのだから。
 怖いのに、怖くて動くことすらままならないはずなのに、キッチンへと進む。もう、何も考えられないのだ。
 星和がこんな体験をしたのは、生まれて初めてだ。
キッチンのすぐそばまで来ると、今まで聞こえていた、叩いているような音と、あともう一つ、誰かの小さな、小さな声が聞こえた。
「星和……あなたは大丈夫よね……?」
 それは母の声だった。いつもの品のある声ではなく、悲しそうで、寂しそうな、そんな声だった。
「母さん?」
 母がいるということで、やっと恐怖は収まり、勢いよく母の所へ行こうと、そう考えていた。
 しかし、何故この時間にキッチンにいるのだろう? 一瞬、嫌な予感がしたが、それはすぐに消えて無くなる。
 顔を無理矢理に笑顔にして、キッチンへ顔だけを出す。
 いつものキッチンだ。異常なし。異常なんて、あるはずがない、そのはずなのに、
「――ッ!?」
 星和が見たモノとは、

 まずはキッチンの床に散らばる、無数の手足。全て、身体からはずれている。その次に、手足の近くにダムのように血を貯めている、すき焼きをするときなどに使う鍋。おまけに、テーブルの上にあるのは、目をえぐり取られた人の顔。これも、身体にはついていない。

「ああ……」
 母は、右手に包丁を持ち、何かを丁寧に切っている。
 トントントン……トントントン……
 また、この音だ。何回目だろうか、この音を聞いたのは――。
 心臓がドクン、ドクン、と必死に脈打つ。
 速く逃げないと、と思う反面、何故かあきらめている自分がいる。
 呆然と立ちつくす星和を放っておき、母はせっせと赤いモノを切っていく。
 それを見ている星和の全身にはドロドロとした嫌な汗が、まるで滝のようにもの凄い勢いで床に落ちていく。その落ちた水分は、すぐに水たまりと化した。
 その恐ろしいほどの量の汗の水たまりに、星和の恐怖でひきつった顔がうつる。
 ――ポチャン
 水たまりに、新たな汗が落ちる。なんでもないような音だが、深夜の静けさの中ではよく通る。
 そして、それは母の耳にもよく通るものだった。

「星和、起きたの?」
 その言葉一つで、身動きが一切とれなくなる。
「か、か……」
 言い訳を述べようとするも、舌が上手く回らず、あえなく失敗。
 母が、不気味な微笑みを浮かべて、こちらへ歩いてくる。
「星和、見たの?」
 何も言えない。言おうとしても、母の気味が悪い表情に圧倒されて、口すら開かない。
「星和、どう?」
 何がどうなのか理解出来ない。ひとつだけ理解できるというならば、それは、この場から一刻も早く立ち去り、玄関を出て、警察に連絡するという逃げ切る策だけだ。
 だが、それも、星和には出来ない。
 親を通報するというのは、どうしても気が引ける。それに、第一動けないので、結局のところは何も出来な――
「――星和」
「ヒッ!!」
 考え事をしていると、目の前に母が立っていた。
 顔や手についた赤い絵の具のような血が、とても生々しく、見ているだけで吐きそうになる。
 それから、目が、赤い。狂気が顕になっているように赤く黒ずんでいる。
「母……さん……ッ!」
 やっと言えた言葉は、酷く震えていた。
「星和、アナタ、ミタワ、ネ」
 どう考えても、言葉のイントネーションが狂っている。普通の日本語が、聞いたこともない国の言葉のようになっている。
「あ、ああ…………」
「ほ、シカ、ず?」
 母の顔面を直視出来ずに、下へ下へと視線を下げる。しかし、汗でできた水たまりにうつる母の顔を見てしまった為、どの努力は水の泡となった。
「ホ死カ圖?」
 母の手が、こちらに伸びてくる。
 ――逃げないと!
 その瞬間、精一杯の力を振り絞り、キッチンから抜け出した。リビングの前、トイレの前、そして、玄関!
 そこまで来ると、足の震えで、ぐらつき、
「うァァァあぁぁあああああぁあぁぁあぁぁああ!!!!」
 星和は、精一杯の力を振り絞ったことも虚しく、足のぐらつきで、玄関へと転がった。
 星和は朦朧とする意識の中で、ゆっくりと、思った。
(これは、夢だ……――)

 意識は、そこで途切れた。




 まあ、なんかわからないです。はい。