リーマンショック後この地区にあった大企業は倒産し周辺を形成していた企業従事者たちもそれぞれにチリジリばらばらになっていた。2011年1月にはこの街には人っ子一人いなくなり同年7月にはこの地の郵便番号が消滅する。65歳過ぎのファーンは亡き夫が大切にしていた食器類や全ての物を自分の愛車に積み込んでここネバダを出発する。途中必需品購入のため立ち寄ったスーパ-で小さな女の子から「先生はホームレスになったの?」と聞かれ「いいえハウスレスよ」と答える。最初に働くアマゾンでは朝礼時、社訓示を班長が確認し今日も頑張ろうと掛け声をかける。駐車場の管理人からアマゾンの仕事は今日までだから「明日以降は月365ドルです」

 

 

 

さすが大企業アマゾンですね。季節労働者の駐車料金まで会社負担なのですね。365ドル(光熱費込み)がこの山の中で高いのか安いのかは別としてファーン(フランシス・マクドーマンド)は次の目的地を求めて出発する。ノマド(遊牧民)の一人になったファーンは旅の行先々年配のノマドや若いノマドとも心を通じていくようになっていく。水やトイレの問題は省略しますので映画を観てから確認してくださいね。そもそもアメリカ人には開拓者の血が流れているためこういう生活も人生なのですが、わが大和民族は「住めば都」というどの地でもそこに根を下ろし農耕で開墾していく先祖の民族スピリットが違う気がします(笑)

 

 

 

ノマドで別れの際には「さようなら」とは言わない「またどこかで会おう」と語り合う。最近コロナの影響からかよくランチを食べに行くお店の女の人から「またどこかでお会いしましょう」と挨拶されるたびなんだかすごく悲しくなります。ついこの間まで娘さんが高校生で母の職場に来て楽しそうだったのに。その後は大丈夫なんだろうかと思ったりもします。道すがら「ドルに振り回される生活からの解放」が理想なのですね。エンパイアはNYのビルだと思っていましたが(笑)ネバダ州の標高1,191Mの乾燥地帯だそうです。カントリーウエスタンが聞こえる中南下していくロードムービーなのです。フランシス・マクドーマンドともう一人ディグ(デヴィッド・ストラザーン)だけが出演俳優でリンダやスワンキーはそれぞれ本人役でそのまま出演している珍しいタイプの映画ですね。燕の巣の見事さ、燃える焚火の中に石を入れるなど実際のノマドさんたちが出演しているからドキュメンタリーを見ているような感じでした。アカデミー作品賞でした。  (☆3.65)