Keele STarT Backスクリーニングツールは、その腰痛が慢性化するリスクがどの程度あるかをスクリーニングするのに有効な評価法です。この方法は世界的に採用されており、日本では2013年に松平浩先生たちによって日本語版が紹介されました。
利点はなんといってもその簡便さ!簡単な9つの質問に答えるだけで予後予測が可能なアンケート形式となっており、また予後予測の妥当性にも大変優れています。(Hill JC, et al. Lancet. 2011.)
合計得点が3点以下であれば慢性化低リスクと予測
合計得点が4点以上であればリスクは中等度以上、
さらに設問5〜9の間の得点が4点以上で高リスク予測(3点以下なら中等度)
アンケートの結果が「低リスク」「中等度リスク」「高リスク」のどれだったかによって、医療従事者や治療家は夫々に見合った対処法をトリアージ(仕分け)していきます。
たとえリスクが中等度以上と予測されてしまっても「もうだめだ...」と落ち込む必要はなく、正しいやり方次第で慢性化を回避するチャンスは十分あります。専門家のアドバイスを受けて適切な運動方法や正しい知識、思考法を取り入れて行くことをお勧めします。
実際にこのアンケート内容を見てみるとお気づきになるかもしれませんが、筋肉の量や関節のカタチ、体力や加齢についての内容というより、むしろその腰痛に対して感じている不安や恐怖、振る舞いを問う内容を中心に構成されています。
つまり腰痛が慢性化するリスクは、画像検査の結果や肉体の強さ、また症状自体の程度より、むしろ心理的要素や活動量などに影響を受けると考えられているのです。
(あくまでごく一部ですが)腰痛に対する不安や活動制限は、医療従事者のひと言で簡単に形成されてしまうこともあります。
「骨がズレてるから無理はいけない」「走ってはいけない」「反るなんてもってのほか」患者に多くの制限を課すことは簡単ですが、その制限がいつしか時間とともに、溶解できない”回復の壁”になってしまう恐れは十分にあるのです。
セラピストとして、むやみに不安や恐怖心を煽るのでなく、「最初は恐かったけれど試してみたら意外と平気だった!」「大丈夫そうです!」と希望や安心感をたくさん与えられる存在でありたいものです。
国際マッケンジー協会認定セラピスト
神崎 勝和