ヴォーリズ建築事務所作品集 | 理想の住宅は閑静な一戸建て

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ともかく、教員時代におけるバイブルクラスの活動のなかに、後の近江兄弟社というキリスト教事業の萌芽があり、その精神は近江兄弟社のなかに位置づけられたヴォーリズ建築事務所の設計思想に通じるものだった。

昭和十二年に出版された『ヴォーリズ建築事務所作品集』がある。

ブルーの布地にプリントされた表題のモダンなデザインと、スクリューファイル綴じの装丁で、全ページグラビア写真印刷によって、大正九年事務所設立以来の代表作品六十二点が収録されている。

目をひくのはミッション系の学校建築、キリスト教会など、一般のビルディング建築は数こそ限られるものの、大同生命保険と大丸百貨店の建築が際立っている。

そして近代洋風住宅の典型といえる住宅が十数棟散りばめられている。

ともかくここに見る作品の質と量からして、ヴォーリズ建築事務所は大正、昭和初期にあって指折りのオフィスアーキテクトであったことがうかがえる。

実際、当時の事務所は所員三十数名を擁して、東京、大阪、軽井沢に支所を置き、年間五十件余りの設計に効率よく対応する機構をもっていたのである。

しかしながらヴォーリズは、建築界にあって特異な建築家としてみられていた節がある。