まねき-ねこ 【招き猫】


すわって右または左の前足を上げ、人を招く格好をした猫の置き物。顧客や財宝を招くという縁起から客商売の家で飾る。

(デジタル大辞泉より)



日本独自の縁起物である招き猫は、江戸時代に江戸の町人文化から誕生したと言われており、その人気は全国へと広がっていった。



招き猫の発祥については諸説あるが、一つは東京・世田谷にある豪徳寺の「招福猫児」説。


はじまりは、一匹の猫が鷹狩り帰りの殿様を、寺に招いたこと。


お寺の門前にいた猫に手招きされ、立ち寄ることに。


寺で過ごしていると、突然雷が鳴り雨が降り始めた。


雷雨を避けられた上に、和尚との話も楽しめた殿様は、その幸運にいたく感動したらしい。


その殿様というのが彦根藩主の井伊直孝で、以来手厚く支援・保護し、いまに至るまで豪徳寺は栄えることになったという。




ところで、マレーシアの特に中国系の飲食店に行くと、

「千客万来」

「客似雲来」(千客万来と同じ意味)

「髙朋満座」(高貴な来客で満席になる)

「生意興隆」(商売繁盛の意味)

といった四字熟語が店の壁を飾っているところが多い。


これらは、親しい知人が額に入れて店の開店祝いに寄贈するもので、縁起物の一種である。


そして、この額入り四字熟語に負けずと店に飾ってあるのが、何を隠そう招き猫である。


この招き猫は、「財」と「客」を呼び込むということで合点とばかりに受け入れられたのだろうが、日本が発祥の異文化のものとは到底思えないほど、マレーシアの店に同化している。


マレーシアのパン屋で見かけた招き猫


それもそのはず、江戸時代に生まれたと言われる招き猫は著作権の保護期間の70年をとっくに過ぎているので、いまや自由にデザインすることができる。


だから、書かれている文字も違えば持っているものも違う。


より中国系が好むものにアレンジされているのは明らかで、「財」を招く右手と「客」を招く左手を同時に両方上げた招き猫を見かけることもある。


これが日本だと「お手上げ」ということで両手を上げることは遠慮されがちだが、こちらは「何でもござれ」という訳なのであろう。


そんな日本にはなさそうな招き猫だが、起源が日本であると知っている私としては愛着が捨てられず、同化するとはこういうことなんだろうなぁと妙に納得してしまうのである。



因みに、アメリカの招き猫は手の向きが反対らしい。


日本では手のひらを相手に向けるが、アメリカでは手の甲を相手に向けてカモンと呼び寄せる。