mcdmの隠れ家 -8ページ目

mcdmの隠れ家

小説裏話なんぞ…

こんばんはmcdmです。
現在、時間を見つけて細々と短編執筆しております。

すべて書き終えてから公開にしようと思っていたのですが、思いの外長くなりそうな上、ちょっと続けて書くモチベーションが落ち気味なので、途中ではありますが順次公開していこうかな、と考えています。

前回のすいかに引き続き、彼らのお話の短編です。
ずーーっと書いてみたかった鉄板ネタをこの場を借りて書いてみます。

シリアススタートかと思いきや、案外そうでもない所へ着地したいと考えていますので、まったり楽しんで頂けたらなぁと……。

それでは次回更新から、お楽しみくださいませ。
すいかの本編は以下のリンクからドウゾ。

すいか(1)
すいか(2)
すいか(3)
すいか(4)ラスト

***

すいか、4回にて無事終了いたしました。
最後まで読んで下さった方に感謝します。

季節は夏、しかもお盆シーズン。
そんな季節に合わせたお話を、と言うことで書き始めた本作です。

人が死ぬと言うことは、それを受ける側が生きているという前提で成り立っています。
それはまるで鏡のようなものじゃないかな、と常々mcdmは思ったりしていました。

このお話は「大きな手~」本編終了後の2人をクローズアップしています。
この先、たぶん2人はずっと一緒にいるんじゃないかな。いてほしいな。
けれどずっとずっとその先には、たぶん死をもった別れが存在しているんですね。
ではそれを悲観して生きて行くのかと言われれば、それはNOと言えるわけで。
ただ、こうして同じ時を過ごし生きていく中で、いろんな経験とか思い出とかを共有して、最後、人生の幕が降りた時、どういった気持ちで見送るのか・見送られるのか、がキーになってくるんじゃないかな。

なんてかたい話はおいといて。

ところで月子さんも葉くんもお年寄りや年上の人から好かれそうですよね。
特に葉くんはおばさま、おばあさまキラーだと読んでいます(笑)
こう、道端で顔見知り程度のおばさまとかから「これ食べなさいな」ってぽんとお菓子もらっちゃうような。
「おばちゃんおおきに!」と爽やかな笑顔でお礼を言ったりして、その関係はずっと続くわけです。

あ、機会があればそんなへんてつもない些細な日常なんかも書いてみたいな。

と言うわけで、これにてすいかすべて終了とさせて頂きます。
ありがとうございました。

mcdm拝

すいか(1)はこちらからどうぞ
すいか(2)はこちらからどうぞ
すいか(3)はこちらからどうぞ


***

「あんま目ぇこすったらあかんって。ほれ、こっち向き」

葉の指がそっと額に触れて、私の前髪をかき上げた。
泣き過ぎで汗ばんだ額に触れる冷たい指。

「やだ、無理、今すごい顔してる」

ぱんぱんに腫れた目を見られるのが恥ずかしくて、必死にそっぽを向いてみた。

「うん、確かに」
「だから無理なの」
「そんなん言うて俺が納得するとでも?」
「しないんだよね」
「よう分かってるやん。ほれ、俺の胸でお泣き」

へらっと笑って手を広げる葉。
ちらりと横目でその姿を覗きみて、やっぱりぷいと逆を向く私。

「えー、拒否ですかお嬢さん」
「だって葉泣きそうじゃない」

いつも葉は笑ってくれてる。
だいじょうぶ、だいじょうぶ、そう私に語りかけるように。
今までずっと2人過ごしてきた期間、私の心の負荷にならないようにって踏ん張ってくれてるの、私だってちゃんと知ってるもの。

「俺は泣かへんよ、オトコノコやしな」

そう言い切る葉の笑顔は、なんて悲しそうなの。

「せやから、月子サンが俺の分まで泣いてくれたらええ」

微かな声で呟いて、葉が私を抱き寄せる。
少し冷えた室内、葉の冷たくて大きな手と華奢な体。
先ほどとはまた違う、静かな静かな涙が頬を伝った。

――――
――――――

目の前に並ぶ、真っ赤なスイカ。
思い出すのは、燦燦と照りつける太陽の下で、私に手招きするお婆ちゃん。
目を閉じれば、私の名前を呼ぶあの優しい声が蘇った。

私はいまここに生きている。
葉もまた、隣で生きている。
泣いたり笑ったり怒ったり、そうして過ごす時間の大切さっていったいどれほどのものなんだろう。


いただきますと二人手を合わせ、おばあちゃんのスイカを味わう。

「今度時間みつけて、お線香あげに行こか」
「うん、行こう」

口に含めば甘い甘い夏の味。
これからは夏が来る度、そして大きなスイカを見る度に、お婆ちゃんを思い出すだろう。






神社横にひっそり佇むおばあちゃんの畑は、それからしばらくの後、埋立てられて駐車場へと姿を変えた。
まるで最初からそこには何もなかったかのように。

その道を通る度、私は心の中で小さく呼びかけてみる。
おばあちゃん、おばあちゃん。
朝にはおはよう、昼にはこんにちは、夜にはおやすみなさい。

私の中に記憶された、あの優しい時間を忘れないように。


【おしまい】