Absence sharpens love(1)
Absence sharpens love(2)
Absence sharpens love(3)
Absence sharpens love(4)
Absence sharpens love(5)
Absence sharpens love(6)
Absence sharpens love(7)
***
『マジで?なんつーかドラマみたい。そんな事があるもんなんだぁ』
ひと通り聴き終えて、アヤネちゃんは心底驚いたと言う風にそんな言葉を口にする。
私もそれに同意するべく、一つ電話口で頷いた。
『ふむ、じゃあとりあえず私これからそっち行っても良い?』
「え、ここに?」
『うん。興味本位…ってのはまぁ半分冗談だけど、ちょっと心配だし』
語尾に向けて、アヤネちゃんの声に緊張感が走るのが分かった。
高校生の頃から、彼女はずっと葉を近くで見てきた。
とても大切に想っているのは、傍で見ていれば痛いほどわかる。
冗談めかして明るく振舞っているけれど、きっと彼女もとてもとても葉が心配なのだ。
「ちょっと待ってね、葉に聞いてみても良い?」
『もち!』
受話口を押さえ葉に向き直る。
それから今の話を簡単に伝え、アヤネちゃんがここに来ることについてどう思うか聞いてみた。
「俺は別に構いませんよ。話してたら何か思い出すかもしれへんし」
「そう、じゃあ伝えるね。―――もしもし、アヤネちゃん?」
速攻で行くから待ってて!
葉からもOKが出たと伝えると、アヤネちゃんは口早にそう言って電話を切った。
水上さんのお店からここまでは普通に歩いていたって15分かからない。
アヤネちゃんの口ぶりからすると、10分程度で到着してもおかしくないはず。
きっと今、彼女は全力で道を走っている。
「アヤネちゃんすぐ来るよ。そうだ、新しい紅茶を淹れてくるね」
外はまだ燦燦と太陽が照りつけている。
走ってここに来るはずのアヤネちゃんを思い浮かべ、私は冷たいアイスティをもう1杯作る為キッチンへと向かった。
――
――――
キッチンの洗い籠の中。
お揃いの茶碗と湯のみが行儀良く並んでいる。
今日の朝、二人で食事をしたのがもう随分前の事のように感じてしまう。
すっかり乾いたそれを手にとったら、胸がぐっと苦しくなった。
美味しいねって笑ってくれてた葉。
あの時の記憶が、今リビングにいる彼の中に存在していないと言うのがとても不思議だと思う。
奇妙な気持ちに襲われながら、私はそれらをすべて食器棚へとしまうことにした。
いつもは何も考えず、ただ流れ作業のように行っていたその行為。
でも今日は、ひとつひとつの食器を両手に抱えてゆっくりと進める。
手の中に収まった陶器が、まるで葉の記憶そのもののように感じたからだ。
すべてしまって食器棚の扉をそっと締めると、磨りガラス越しに茶碗と湯のみが仲良く並んでいるのが見える。
なんとなくそれだけで幸せな気分になった私は、よし、と小さく呟いてアイスティの準備へとりかかった。
お茶の葉が入った缶を戸棚から取り出しケトルを火にかける。
茶葉を救い出しティーポットへ静かに流し入れる。
今日の茶葉は水上さんのオススメ、オレンジのフレーバーティ。
そうして冷凍庫の中に氷のストックがたくさんある事を確認した所でインターフォンが鳴った。
時計を見れば電話を切ってからまだ5分と経っていない。
どうやら私の予想はばっちり的中したようだった。