mcdmの隠れ家 -5ページ目

mcdmの隠れ家

小説裏話なんぞ…


Absence sharpens love(1)
Absence sharpens love(2)
Absence sharpens love(3)
Absence sharpens love(4)
Absence sharpens love(5)
Absence sharpens love(6)
Absence sharpens love(7)

***

『マジで?なんつーかドラマみたい。そんな事があるもんなんだぁ』

ひと通り聴き終えて、アヤネちゃんは心底驚いたと言う風にそんな言葉を口にする。
私もそれに同意するべく、一つ電話口で頷いた。

『ふむ、じゃあとりあえず私これからそっち行っても良い?』
「え、ここに?」
『うん。興味本位…ってのはまぁ半分冗談だけど、ちょっと心配だし』

語尾に向けて、アヤネちゃんの声に緊張感が走るのが分かった。
高校生の頃から、彼女はずっと葉を近くで見てきた。
とても大切に想っているのは、傍で見ていれば痛いほどわかる。
冗談めかして明るく振舞っているけれど、きっと彼女もとてもとても葉が心配なのだ。

「ちょっと待ってね、葉に聞いてみても良い?」
『もち!』

受話口を押さえ葉に向き直る。
それから今の話を簡単に伝え、アヤネちゃんがここに来ることについてどう思うか聞いてみた。

「俺は別に構いませんよ。話してたら何か思い出すかもしれへんし」
「そう、じゃあ伝えるね。―――もしもし、アヤネちゃん?」

速攻で行くから待ってて!

葉からもOKが出たと伝えると、アヤネちゃんは口早にそう言って電話を切った。
水上さんのお店からここまでは普通に歩いていたって15分かからない。
アヤネちゃんの口ぶりからすると、10分程度で到着してもおかしくないはず。

きっと今、彼女は全力で道を走っている。

「アヤネちゃんすぐ来るよ。そうだ、新しい紅茶を淹れてくるね」

外はまだ燦燦と太陽が照りつけている。
走ってここに来るはずのアヤネちゃんを思い浮かべ、私は冷たいアイスティをもう1杯作る為キッチンへと向かった。


――
――――

キッチンの洗い籠の中。
お揃いの茶碗と湯のみが行儀良く並んでいる。
今日の朝、二人で食事をしたのがもう随分前の事のように感じてしまう。

すっかり乾いたそれを手にとったら、胸がぐっと苦しくなった。
美味しいねって笑ってくれてた葉。
あの時の記憶が、今リビングにいる彼の中に存在していないと言うのがとても不思議だと思う。

奇妙な気持ちに襲われながら、私はそれらをすべて食器棚へとしまうことにした。
いつもは何も考えず、ただ流れ作業のように行っていたその行為。
でも今日は、ひとつひとつの食器を両手に抱えてゆっくりと進める。
手の中に収まった陶器が、まるで葉の記憶そのもののように感じたからだ。

すべてしまって食器棚の扉をそっと締めると、磨りガラス越しに茶碗と湯のみが仲良く並んでいるのが見える。
なんとなくそれだけで幸せな気分になった私は、よし、と小さく呟いてアイスティの準備へとりかかった。

お茶の葉が入った缶を戸棚から取り出しケトルを火にかける。
茶葉を救い出しティーポットへ静かに流し入れる。
今日の茶葉は水上さんのオススメ、オレンジのフレーバーティ。
そうして冷凍庫の中に氷のストックがたくさんある事を確認した所でインターフォンが鳴った。

時計を見れば電話を切ってからまだ5分と経っていない。
どうやら私の予想はばっちり的中したようだった。


Absence sharpens love(1)
Absence sharpens love(2)
Absence sharpens love(3)
Absence sharpens love(4)
Absence sharpens love(5)
Absence sharpens love(6)

***


「月子さんと俺が出会ったのって、いつですか?」

葉からの質問、私はそれに答えるために指折り数えて。
ひぃふぅみぃ、数えて3年目になる。

「三年前、葉が17歳で、私が23歳の頃よ」
「元々知り合いで?」
「ううん、違う、ある日ね、突然葉からメールが届いたの」
「突然?」
「そう突然。ひとりぽっちだった私の所に」

そう、ひとりで身動きがとれなくなっていた私の元に、葉からのメールが届いた。
忘れもしない、寒い夜。深夜0時。
届くはずのないメールが届いたのは、今から思えば神様のいたずらのようなものだったのかもしれない。

あれからゆっくり時間が流れて、そう言えば葉とあの時の話をすることってほとんど無かったように思う。
葉にとってあれが完全に思い出になっているのか私にはわからない。
17歳の葉にとって、重くて重くて、あまりにも暗い出来事は、ずっとお互いの中にしまわれたままだ。

こちらを見つめる葉、話を続けて欲しいとその目が訴えている。
けれど、私達のあの出会いを話すということはすなわち、葉が失った大切な人についても触れざるを得ないことになる。

どうしようか、今の葉に話すのはまだ急過ぎるのでは無いか。
まだゆっくりと、葉がもう少し落ち着いた頃だって遅くないはずだろうし。
短時間で一生懸命考えてみても、正解が一体どれなのか分からない。

「あのね、葉」

沈黙が重い、なにかとにかく話そう、そう思って言葉を発した瞬間、部屋に大きな音が鳴り響いた。
突然の事だったので、驚いて体がびくんと震え上がる。

「あ、携帯……びっくりした」

音の主はカバンの中に入れたまま放置されていた私の携帯。
着信音は聞き覚えのあるメロディで、ディスプレイを確認する前に、それが誰からのものなのかすぐに見当がついた。

「アヤネちゃんだわ」
「お友達ですか?」
「あ、うん、葉のお友達でもあるのよ」
「ああ、そうなんですか」

アヤネちゃんの名前を聞いたら何か反応があるかもしれないと思ったが、まったくそんなことは無かったらしい。
あまりに普通な葉のリアクションに少し拍子抜けする。

「ごめんね、ちょっと電話に出るね」

答える変わりに葉はひょいと手のひらを差し出し”どうぞ”の意思表示を見せる。
ありがとうと答える変わりに私は微笑み返し、通話ボタンをプッシュした。

「もしもし、アヤネちゃん?」
『月子ー!今時間よかった?』

いつもと変わらない元気な声が向こうから聞こえてきた。
出会いはなんとも険悪だった私達だけれど、あの時からずっと変わらず大切な友達としての付き合いは続いている。

「うん、大丈夫よ。何かあったの?」
『いや実は、今日水上さんの所に行ってたんだー髪切ってもらったのね。それでもし月子に時間あったら一緒にごはんでもどうかなと思って』
「そうだったの。時間はあるにはあるんだけど、実はちょっと色々あって……」
『え、なに?どうしたの?そう言えば月子なんか元気無いっぽい?』

ちらと葉を見てみる。
葉は手でOKのサインをして微笑んでいる。
伝えても良いという合図だと受け取って、私はアヤネちゃんに今日起きた事についてかいつまみ話すことにした。
執筆途中ですが、ちくっと慌ただしいので次の更新までしばしお待ちをm(__)m

放置も何なので雑談などをば。

mcdmは物を書くとき、基本的には音を一切遮断するタイプなのですが
(そうしないと音に集中してしまって書けないのです)
時々想像力を膨らませたいなぁって時は好きな音楽を聞いたりもします。
今日はそんな気分だったのでランダムで色々聞いていたのですが、ふとCoccoの「もくまおう」に差し掛かったときに、あーこの歌詞は素敵だなぁと思ったりしました。

一部抜粋。

あなたにあげたいもの
独り集めて 背負った
わたしが欲しかったのは
あなたを守る力
変わっていく私を
笑ってもいい

これって月子さんぽいなぁーと思ったり。
でも聞いてたら別の歌詞もあって

あなたを縛っていた
全て解いて 気付いた
溢れて止まらないのは
長い長い夜の祈り
譲れない光は
この手に在るよ

こっちは、ユキちゃんぽいなぁと思ったりもしたんです。
と同時に昔の葉くんぽくもあるなぁと。

ユキちゃんは結局本編で既に亡くなっていて、文章にきちんと起こしたことは殆ど無いです。
(番外で七夕のお話がありますが)
でも私の中ではもうずっとずっと彼女のお話はあったりします。
いつになるかわからないけど、彼女のお話もいつか絶対書こうと決めています。

なんてふと思って書いてみました。
歌詞って普段はあまり意識してないんですけれど、あっ、これすごい良い!って思う時もありますよねぇ。

それでは再び執筆に戻ってきまっす!
アディオス!