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福島第1原発事故に伴う警戒区域に指定されていたため休院中の南相馬市立小高病院の元院長、遠藤清次医師(55)が5月、同市鹿島区三里地区の仮設店舗「希望」に「絆診療所」を開設する。病院を利用していた小高区の住民が多数暮らす仮設住宅群の一角に1年ぶりに復帰。遠藤医師は「住民の近くで自分の役割を果たしたい」と話す。
「希望」は、敷地約960平方メートルの平屋2棟に鮮魚店や美容室など仮設事業所7店が入居する。市と中小企業基盤整備機構(東京)が建設し、来月1日に全店オープンの予定だ。同機構が被災地で手がけた300件超の事業で診療所が入るのは初めて。鹿島区に建つ仮設住宅2100戸余のうち700戸超が、歩いて通える約500メートルの範囲内にある。
小高病院は原発事故直後、患者約70人を新潟県などの病院に避難させた。遠藤医師も昨年4月中は避難所で巡回診療し、猪苗代町立猪苗代病院へ。その後、鹿島区に整備された仮設住宅に小高区の住民が戻り始めた。住民には高齢者も多く「先生も戻ってください」との声が寄せられ、鹿島商工会(沢田一夫会長)も後押しして診療所開設が実現した。
絆診療所のスタッフは7人。遠藤医師は、診察台のチェックなど準備に余念がない。「みなさんに恩返ししたいし、孤立を防ぎたい。絆でできた診療所なので、コミュニティーづくりの拠点にもしたい」と語る。
鹿島商工会によると、鹿島区内の病院・診療所は十数年前の8カ所から3カ所に減少した。小高病院は震災前から医師不足で存続が危ぶまれていたが、住民の署名活動などに勇気づけられてきたという。
沢田会長は「病院が少ないのに避難者はたくさん暮らす。通院弱者を救ってほしい」と絆診療所に期待を寄せている。【高橋秀郎】