--- 檜山乃武 『音楽家の名言』p. 44. ヤマハ (2010)
強烈な言葉です。「この曲、もう飽きた」って言えなくなります。。。
その曲に対する自分のモチベーションが下がったというよりは、曲側から見て、その曲が自分のモチベーションに見切りを付けたということ。
何回も何回も練習して「飽きた」と感じるなら、もうその曲の中での「伸びシロ」はないということでしょうか。その曲の中で改善できる部分を自分で見つけられなくなった状態ですから。
課題は沢山見えていても、それらを自分で乗り越えられると思えていないという証拠とも言えます。「出来そう!やれそう!」と思えていたら「飽きた」とはなりませんよね。
メンタルトレーニング理論において、モチベーションの向上にはゴールセッティング(目標設定技法)というスキルがあります。簡単にいえば、ある期間後のなりたい自分を想定し、そのための課題を目標として設定する技術です(結果目標とプロセス目標の2つがあります)。
できるだけ、具体的、計測可能、現実的など、その設定原則は頭文字をとってSMARTと言われています。
今できていないことを目標に置くことは分かりやすいし、伸びるためには常に意識しておくべきことですが、音楽家としては考えなければならないことが出てきます。音楽を「できた or できない」ではっきり区別できるかどうかという問題です。
その難しいパッセージを弾けたから(その音を出せたから)「できた」とはならないはずです。自分の奥深い何かとその音たちはリンクしていなければならないし、その奥深い何かとは常に自分の中で変化していると思うからです。
そう考えていくと、このスポーツやビジネスの場面で活用されているゴールセッティング技法を、そのままの形では音楽家に応用することはできないと思っています。
「できた/できない」「勝った/負けた」「シェアを取った/取られた」という、誰が見ても分かりやすいものを課題として扱わないのが音楽の正しい道だと思います。
では、音楽家のためのゴールセッティングとはどのようなものが良いのでしょうか。私個人としては、本当の自分を知るために、潜在意識や無意識の問題は避けて通れないのではと思っています。
意識で「飽きない」ようにするというよりは、なぜか分からないけど自然に「飽きない」という方向に行くために。。。
音楽家の名言 あなたの演奏を変える127のメッセージ/檜山 乃武[ひやま・のぶ]

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