--- バーンスタイン・カスティリオーネ『バーンスタイン 音楽を生きる』 p. 115. 青土社 (1999)
音楽家にとって、最も大切なメンタルスキルは何でしょう。
音楽家は、決まった時間に、例えば夜8時から自分のリサイタルが始まるなら、例えば8時10分45秒目というような?「今ここで」出す音に必ず意識を集めなければならず、また、良い演奏をしたいと思うなら、その集めた意識を曲が終わるまで続けることが求められるので(その間の時間は絶対に戻ってこない)、音楽家にとって最も大切なメンタルスキルは「集中力」ではないでしょうか。
音楽演奏は決められた時間の中でいかに集中できるかという芸術ですよね。
プラス思考や肯定的セルフトーク、ルーティンワークとかポジティブイメージングとかは二の次。
極端な話、マイナス思考で舞台に上がり、否定的なセルフトークを自分に浴びせ、最初の音を出すまでのルーティンワークを無視し、失敗するイメージを持って演奏に入ったとしても、音を出すその瞬間に、それらネガティブなことを忘れようが忘れまいが関係無く、今出す音に集中できれば All OK な種類のパフォーマンスが音楽です。
今から出す音に集中できるかどうかが最も大切で、そのために上に挙げたメンタルスキルを総動員するということですね。
音楽家のメンタルトレーニングは、目的が音への集中(没頭)で、そのための手段としてメンタルスキルがあるということを忘れてはならないでしょう。
ポジティブシンキングをするために音に集中するなんてことは本末転倒です。
スーパーゴルファー、タイガーウッズの脅威の集中力の源は「情熱」だそうです。情熱を高めることが集中力を高めることになると言っています。
では、情熱を高めるためにはどうすればいいか。タイガーウッズはそれはゴールセッティングで決まると言っています。
夢に向かう目標が情熱を高め、そして集中力を高めると。
しかし、スポーツのように成果が勝利や数値で分かりやすく、またそれによって今できていないこと、つまり目標や課題自体も(音楽と比べて)明確で分かりやすいから、やる気が高まるというところもあると思います。
しかし、成果が、自分の内発的創造性という抽象的なものの発揮に寄るところが大きい芸術となると、今はできていない課題で尻を叩き続けるというのは限界があるのではないかと私は思っています。
自分の夢には向かっているけれども、できていないことで自分を鼓舞することは、クラシック音楽に必要なメカニック的な技術獲得には必要とは思いますが、創造性という元々自分の中に潜在的に備わっているものを引き出すことになると、コトはそう簡単にはいかないのではないでしょうか。
むしろ、自分のできることや今できていること、自分の存在を認めてあげる努力または感謝が内発的創造性を抑え込まないことになると思うのですが。。。
そして、その内なる創造性自体が情熱(本当のやる気?)を持った時、まるで子供が砂場で無我夢中に遊んでいるみたいに、あるいはバーンスタインがここで言っているように爆弾が飛んできても気付かないくらいの没頭につながっていくのだと思います。
バーンスタイン音楽を生きる/著者不明

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