--- バーバラ・L・サンド 『天才を育てる ー 名ヴァイオリン教師ドロシー・ディレイの素顔』 p. 99. 音楽之友社 (2001)
パールマンやミドリなど一流のヴァイオリニストを数多く育て上げたドロシー・ディレイ。
この言葉以外にも、この本のなかには「音楽を学ぶ」ための心構え、つまりメンタルに関すること、もっと言えば音楽家用の「哲学」が沢山書かれています。
スポーツ・セルフトーク理論では、ネガティブな言葉にも一定の効果が認められるという研究もありますが、それには「短期的な場合では」という但し書きがあり、長期的に考えると効果はマイナスになるというのが通説です。
このディレイの恐怖心についての言葉は、この理論を裏付けていますね。
「(恐怖心の) 発生源が目の前から消え去れば」、その時だけ効果があったかもしれないネガティブな思考や言葉もそれに応じて無くなりますからね、そのような消え行く可能性のある恐怖心や不安感を、音楽を学ぶための基本的な心構えや動機に入れることはできません。(恐怖や不安が消えることなく、それによって成功???に導くもの、、、それは戦争です)
しかも、音楽は技術や表現が自分の奥深い動機と結びついておりその修得プロセスに恐ろしく時間がかかる可能性のあるものです。
昨日の記事で、音楽を学ぶプロセスは「ずぅぅぅぅぅぅぅぅぅっと同じ状態」が続くと書いたばかりですが、そんなにも平坦が長い階段を恐怖心で進んで行くのには無理がありますって。。。
音楽する心構えや動機は長期的に考えないといけないものだと、このディレイの言葉によって再確認しました。
できたかも?という、あの一段分上がった景色の満足感や幸福感こそが、やはり心の支えになりますよね。
あの感覚を忘れずに、今現在「できないなぁ」という箇所に取り組み続けなさいと、ディレイ先生がおっしゃっております!!!
もう一つ、ディレイ先生がメンタルスキル的に大切なことを言っています。それはゴールセッティング(目標設定技法) の考え方についてです。
「成功する人は、(中略) 自分のやっていることに誇りを持つことを覚えた人達」と言っています。
以前このブログで紹介しましたが、ゴールセッティングの原則として、
Specific (具体的)
Measurable (計測可能)
Achievable (達成可能)
Realistic (現実的)
Time-phased (期間設定)
のSMART5原則を考えて目標を立てるというのがありますが、このなかに、音楽家用として「誇り(Pride) を感じるかどうか」という項目も必要ではないでしょうか。
ディレイ先生が挙げた「成功する演奏家の条件」である「誇りを覚える」ためというのはもちろんですが、まず目標や課題を「誇り」に思えるかどうかという主体が他人ではなく自分であり、自身の内発性を考え続け、そのような自己対話を促すと思うのですが、いかかでしょうか。
目の前の課題に取り組んでいるという事実を誇りに思えれば、「ずぅぅぅぅぅぅぅぅぅっと同じ状態」を持ち堪えることにつながると思うのですけれど。。。
天才を育てる―名ヴァイオリン教師ドロシー・ディレイの素顔/バーバラ・ローリー サンド

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