--- 檜山乃武 『音楽家の名言』 p. 110. ヤマハ (2010)
20世紀を代表する、ポーランド出身のピアニスト、ルービンシュタインの言葉です。
この言葉ととても似ているものとして、ジャクリーヌ・デュ・プレ、ドロシー・ディレイ、クラウディオ・アラウ、ナージャのメッセージが挙げられると思うのですが、こんなにもマエストロたちが口を揃えて、自身の奥深いところに位置している「芸術エネルギー」を自覚し、それを育てることの大切さを述べているならば、音楽家のメンタルトレーニングとしてそれを取り入れないわけにはいきませんね。
この自分の中に存在している「芸術エネルギー」という内発的な動機が、ともすると単調で孤独になりがちな練習を下支えしています。
シリアスにクラシック音楽に取り組んでいる人なら、これがどれほど大切なことか分かるでしょう。(注: ピュアな「内発的動機」を汚されていない子どもたちはこの限りではないですが!)
たしかに、コンペティション勝利やオーディション合格、仕事獲得、契約獲得、ギャラの増加、聴衆の反応などなど、そのような外発的動機も、音楽するモチベーションが上がるなら、また自分の実力を伸ばすためなら、消し去る必要はないわけですが、そこには絶対に音楽家/芸術家としては外せないルールがあって、自分の中にある(というか、自分の中にしか存在しない)内発的動機の充実さや新鮮さが必須であり、それら「芸術エネルギー」がしっかりと外発的動機とバランスしていると自分が納得していることが条件です。
もし、自分の「芸術エネルギー」が枯れつつあるのに、コンペティションに出なくてはいけない状況は、実力降下の悪循環のスパイラルに入り、メンタルトレーニングでいうところの「バーンアウト(燃え尽き症候群)」への道まっしぐらとなってしまいます。
街や公園などを歩くと、自然の生命の美しさやその驚くほどの変化を感じ、ルービンシュタインの言う「全くの奇跡」があらゆるところで起きているということに気付くでしょう。
このルービンシュタインなどマエストロたちのメッセージは、そのような、周りに存在するあらゆることを新鮮な眼で見ることが、自分の音楽する「芸術エネルギー」に栄養を与え、音楽する自己肯定感を増やし、自身の演奏をより深く生き生きと意味のあるものにしていくことにつながると伝えているのだと思います。
音楽家の名言 あなたの演奏を変える127のメッセージ/檜山 乃武[ひやま・のぶ]

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