--- 檜山 乃武 『音楽家の名言2』 p. 80. ヤマハ (2011)
指揮者のチョン・ミョンフン、ヴァイオリニストのキョンファ、チェリストのミョンファの母、イ ウンスクの言葉です。
私はビデオでミョンフン指揮のベートーベン「運命」を見たことがあるだけで、まだライブで聴いたことがなく、いつか是非聴きたい指揮者なのですが、ビデオで見ただけでも、頭の中にある音楽の、何と言えばいいのでしょうか、濃厚さ、濃密さ、繊細さ、または巨大さというものを凄く感じましたね。
「音楽の根っこを掘る」という彼の言葉をどこかで聞いたことがあります。
彼の内部にある音楽性って、その「根っこ」を探す欲?力?はもちろんのこと、それを掴んで離さない力も強く、あとはそれに任せて自然に音楽が流れ出る!という感じを私は持ちました。
「競争心ではなく、個人的な熱意としての努力」というミョンフンの言葉を前に引用しましたが、今回は、そんな彼を育てた母の言葉です。
「豊かな感情を感じることのできる能力」
もう、音楽家の(芸術家の?)メンタルのあり方としてはコレに尽きると言っても過言ではないかもしれません。
音楽家にとって最も大切な集中力も、演奏で意識をどこに集めるかと言えば、まず自分内部の豊かな感情エネルギーに向けるわけですので、この能力の伸びと集中力は比例すると思いますね。
昨日のフレミングの言葉を引用した記事で述べた「無意識的努力のようなものを育てる」「自分にしかない創造力に栄養を与える」というのも、彼女の言うところの「豊かな感情を感じることのできる能力を育てる」ことと同じライン上にあります。
豊かな感情や内発的動機、感受性について、それを「実現する (外に出す)」ことよりもまず、「育てる (中に入れる)」ことが何よりも大事だと。それが昨日のフレミングの言葉ではないですが、「音楽をとにかく続ける」ことにもなるのだと思います。
親としてこんなにも素晴らしい音楽家を育て上げた人の言葉ですので、説得力が違いますね!
「豊かな感情を感じることができる能力」は、創造したいと欲する気持ちや集中力と直接的にリンクしていて、継続や独創性の源になるのだと思います。
自分の感情がダメダメな時は、音楽する、つまり何かを創造したいという欲も薄く集中力も出てきにくいですよね。そんな時に無理に練習しても心や体のケガの元になってしまいます。
そんな時は(というより、集中力が特に必要な音楽家は常に、だと思いますが)、「豊かな感情を感じることができる能力」という原点に立ち戻り、その回復やケアを怠らないことですね。
音楽家のためのメンタルトレーニングとしては (トレーニングとは、"訓練"よりも"成長"の意味合いが強いでしょう)、この「豊かな感情を感じることができる能力」の回復やケアとしての日々のルーティンをいかに自分自身で行えているかということを考えるべきですね。
美しいなぁ!綺麗だなぁ!美味いなぁ!という気持ちに気付くことは「豊かな感情を感じることができる能力」を伸ばすことになると思いますが、一番大きいのは、様々な自己啓発本に出てくる!「感謝」かもしれませんね。
そこにはまず、自分にとって上辺や体裁上ではなく、本気でありがとう!ありがたい!という気持ちになれる人や事柄を探す意味がありますよね。そしてそういう感謝があるからこそ、それを奪われた時のネガティブな感情表現にも「集中力をもって」真に迫ることができるのではと思うのです。
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