--- 檜山 乃武 『音楽家の名言2』 p. 82. ヤマハ (2011)
これは、娘のヴァイオリニストのキョンファが、デビュー直後に急に辞めたいと泣いて訴えた時、彼女の母イ・ウンスクが話した言葉で、キョンファはこの言葉をきっかけに立ち直ったそうです。
何年も演奏活動やってきて、というわけではなく、デビュー直後に「辞めたくなる」という心情というのは、実際どのようなものなんでしょう (本当のところはデビューした演奏家のみぞ知る、でしょうか)。
当時のキョンファが、実際どんな気持ちで辞めたくなったのかは分かりませんが、演奏に対する「恐怖、不安、不自由さ、不自然さ」などなど、様々なストレス因子が考えられます。
前回のイ・ウンスクの言葉に「豊かな感情を感じることのできる能力」を育てる、というのがありました。本当に、例えば、この考えが骨の髄まで染み込んでいたら、演奏よりも人間の成長を優先し、今日の言葉もさもありなんと思うのですが、どうでしょう。
スポーツ・メンタルトレーニング理論に、ソーシャルサポート (「重要な他者からの援助」) という項目があり、それは大きく3種類に分けられます。
1.情緒的サポート: 認知段階
ストレスの脅威減少
2.道具サポート: 対処段階
適応行動の促進
3.コンパニオンシップ
共通の趣味や娯楽の共有
ソーシャルサポートは、負傷予防やチームワークの充実、そしてストレス対処の効果が認められていますが、この母イ・ウンスクの娘へのサポートは、情緒的サポートであり、ストレスの対処に効果があったということになると思います。
「音楽よりも人間が先にくる」という、本人にとって重要な他者である母からの力強い言葉は、デビュー直後、急に今まで感じたことがないストレスに晒されたキョンファのメンタルを癒し、対処行動を取ることを促したと言えるでしょう。
音楽家の名言2 ~演奏への情熱を取り戻すメッセージ~/檜山 乃武

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