--- バーバラ・L・サンド 『天才を育てる―名ヴァイオリン教師ドロシー・ディレイの素顔』 p. 100. 音楽之友社 (2001)
あのパールマンやミドリなど数多くの一流ヴァイオリニストを育てた、ドロシー・ディレイの言葉です。
数多くの才能を見て育ててきた経験値として、音楽の修得に人間的成長が深く関わっていることを肌で感じていたのでしょう (人間的成長も見抜く眼力がヴァイオリン教師として飛び抜けた存在にさせた理由の一つかもしれませんね)。
この言葉は、子供から大人になる時の精神的な成長の過程について述べていますが、大人の音楽家であっても、このディレイのアドバイスは意識しておくべきことではないでしょうか。
「自分の思想、考え方、感情だけが、本当に自分の所有するものであると認識すべきです。」
本当に自分の所有するもの。。。
この文を読んだ時、あるスピリチュアル系の本の「本当の自分 (潜在意識) 以外の全ては幻想である。他人も、目の前のモノも、銀行残高も。」と断言している文章を思い出しました。
その本は、経済的に成功したビジネスマンが精神的な成功も収めた (と自分で考えた) 思考方法を書いた本ですが、意識さえも幻想で潜在意識だけが本当の自分かつ本物であると言い切っており、その真実に気付き、本当の自分、つまり潜在意識が変わると目の前の世界 (ホログラム) が驚くほど変わると述べています。
ところで、スピリチュアル系と聞くと胡散臭い感じを抱く人がいますけれども、実はメンタルトレーニングとスピリチュアルは似ているところがあります。
例えば、野球のメンタルスキルとして、エラーをした選手や三振/凡打した選手がマイナス思考を持っているなら、そのネガティブな言葉を紙に書き、その紙を実際にトイレに流してマイナス思考を追っ払うきっかけにするという方法がありますが (実際ベンチにトイレを置いているのです)、これはスピリチュアルの方法でも全く同じやり方で使われている方法です。
メンタルトレーニングというと、スポーツ心理学をベースにして統計的に有意差が認められた理論なのですが、セルフトークやイメージトレーニングの実践としてやっていることは、スピリチュアル系の本に書かれていることと似通っていることも多いです。
私たち音楽家は、スポーツ心理学発であろうがスピリチュアル発であろうが自分の演奏に効く方法を使う、と「自分で」判断する自由なスタンスでいるべきだと思います。
さて、ディレイは「精神的な成長」として「自分自身の判断が正当であると、はっきりと悟る」と書いていますが、上記のスピリチュアル的仮説を考えつつディレイの言葉を見ると、この「自分自身」とは潜在意識を含めた自分ということで、「悟る」というのはそのように潜在意識までストンと落ちることを言うのではないでしょうか。
また、「自分の思想、考え方、感情だけが、本当に自分の所有するものであると認識すべき」というのも、自分の本当の所有物とは意識/無意識/潜在意識全てを含めた心だけであり、それ以外のものは非所有物であり、自己コントロール外の幻想かつニセモノという意味があるのではないでしょうか。
そう考えるならば、生きることや演奏することで本当に集中すべき対象は何なのか自ずと分かってくるような気がします。
天才を育てる―名ヴァイオリン教師ドロシー・ディレイの素顔/バーバラ・ローリー サンド

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