--- 中丸三千繪 『マリア・カラス コンクール』 p. 58. 講談社文庫 (1995)
ヨーロッパの大きなコンペティションやコンクールを総なめし、世界の超一流の舞台で活躍している大ソプラノ、中丸三千繪氏が本番の演奏に備える考え方を語っています。
まずこれは、自分の中にある表現方法はどのくらいあるのか把握しなければならないと言っていることでもあると思います。
私など歌い手として未熟ですので、自分の発声レベルに合った表現方法しかなく、一つの曲で何十個もありませんが。。。(いえいえ、数年前よりは発声の成長に応じて表現の幅も拡がったと思いますよ。えぇ、そうですよ、そうですとも。。。。。)
まず自分の中で「やれる or やりたい」表現を知ること、つまり意識でコントロールできる自分を知っておくというのは、本番時にできるだけ「未知の部分」を少なくしておくということでもあると思います。
一方でこれは、自分のなかの「未知の部分」に当たる、潜在意識という大きな力の存在を認めているということに他ならないのですが。
クラシック音楽は、弾く曲目や音符が全て予め決まっていて練習と同じことをすればよい種類のパフォーマンスですから、敵が何をするか分からないスポーツと比べると「未知の部分」が少ないパフォーマンスですが、それでもなお、中丸氏本人も「自分自身でも、本番中にどういう自分に出くわすか、わからない」と言っている通り、やはり本番では予想不可能の自分、つまり潜在意識からの自分が表出してきます。
それこそがクラシック音楽の醍醐味であり、潜在意識としっかりコネクトした音は自然かつ内発的な音であり、聴衆との深いコミュニケーションの可能性が高まると思うのですが、逆に、自分の意識が自分の潜在意識に振り回されてしまうと音楽の醍醐味うんぬん以前の音楽になってしまいます。
そういう意味で、私たち音楽家は、中丸氏のように自分のなかに眠る莫大な資源の潜在意識の存在を認めた上で、その力と最適なバランスを取るための意識的な (メンタル) トレーニングを日々の技術練習のなかに常に取り入れ続ける必要があるのではないかと思います。
マリア・カラス・コンクール―スカラ座への道 (講談社文庫)/中丸 三千繪

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