--- 檜山 乃武 『音楽家の名言2』 p. 78. ヤマハ (2011)
やはり、音楽家にとって大事なのは集中力。世界の超一流の舞台で経験を重ねている小澤征爾氏が言うのだから間違いないっ!
小澤氏といえば、ここNYのメトロポリタンオペラで振った「スペードの女王」を観ましたが、オケが、よく鳴っていて、また、よく歌っていたことが思い出されます。
その時に私は「小澤さん、オペラ開幕前に楽団員一人一人全員に声かけて意思の疎通でもしたのかなぁ(笑) 」とぼんやり思ってしまうくらい、オケが音を丁寧に丁寧に鳴らしていました。
そうです。オケの演奏者一人一人が集中力を発揮していたのです。音を慈しんで慈しんで出している感じでしたね。
オケ全体が小澤氏が指し示すある方向に団結して向かっていましたが、それは多分、小澤氏の高い集中力が楽団員に伝播した結果なのでしょう。
メンタルトレーニングの集中理論として何度もこのブログで紹介していますが、集中の種類の物差しに、内向きor外向き、狭いor広いというものがあります。
私はこの2つの物差しのうち、内向きor外向きという方向性が音楽家にとって集中力を発揮するために重要なのではないかと思っています。
自分が出したい音を内向きの注意、たった今出した音を外向きの注意で捉えるので、両方のディレクションが演奏時には同時に必要です。
そしてもっと大切なことは、その双方向のディレクションは意識、つまりメンタル的な方向性なのですが、演奏時に使っているエネルギーもその方向性で捉えるということです。
それは演奏時の意識とエネルギーのディレクションを一致させることであり、そのようなディレクションを使うことによって音やフレーズがデコボコにならずに一貫性を伴ったものとして流れていきやすくなります。
身体が楽器の声楽で例えると、エネルギーである息が、どこから始まり(内向き) どこに出ていくのか(外向き) を意識でイメージし、その息と意識のディレクションが安定していると音としての声も安定していきます。
声楽家のなかには、「まず息/呼吸の柱を立てる」と言う人もいますが、これは、メンタルスキル的には意識とエネルギーのディレクションを一致させる意味があり、または、意識(メンタル)とエネルギーをバラバラに働かせないようにしているとも言えます。
私は、このようなディレクションが、集中力が不可欠の音楽家には特に必要だと思っており、前にこのブログでご紹介した、ピアニスト海老彰子氏のコンサートを聴いて感じた「意識と身体のディレクション」は、まさしく音楽家が参考にすべきことなのではと考えています。
集中力といっても、どういうエネルギーが自分のどこにあり、それがどこに向かっているのか、そういう意識や注意を集めることが音楽家の集中力であり、それがブレないという自覚が本番での自信になると思うのです。
音楽家の名言2 ~演奏への情熱を取り戻すメッセージ~/檜山 乃武

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